大きく息を吸うと同時、瞼が震えた。
ゆっくり瞬きをする。天女がふわふわ、目の前を舞っていた。
もしや私、死んだのでは……。
頬が濡れている。父や母の姿が見えたような気がするけど、あれは夢だったのか。
ぼんやりしていると、天女の前に知った顔が割り込んできた。
糸目の感情が読み取りにくい顔。男にしてはつるっとした肌の彼は、間違いなく晋耕だ。
「あああー! 主上、主上~っ!」
一瞬見えた晋耕は大声を上げてどこかへ行ってしまった。
なんだあいつ……。
頭がだんだんとハッキリしてくる。
頭上を舞っていた天女は、天井に描かれた絵だった。
どうやら私は牀榻に寝かされているようだ。
「宇俊!」
大きな声がしてそちらを見ると、髪を振り乱した皇帝が息を切らせて立っていた。
「主上……?」
「そうだ、俺だ」
ゆっくり体を起こす。どこも痛くない。