「まっさか……」

この廟に、火を放たれたんじゃないか、なんてね。

「そんなわけ」

笑おうとしたら、嫌なにおいが一気に口に入ってきてむせた。涙が自然に滲む。

「そんなわけない」

袖で口元を覆い、入り口に走る。

「ちょっと! 冗談が過ぎますよ!」

扉を叩いて抗議するが、返事はない。

その代わり、足元から煙が昇ってきた。

燃えている……!

背筋に冷たいものが走る。

単なる嫌がらせで、先帝の霊廟に火を放つ者がいるか? 捕まれば不敬罪で死刑だ。

そこまでして誰かが、私を殺そうとしている……?

床板が熱くなってくる。廟の中の空気が熱せられる。

私は花瓶の水を自分にかけた。

死んでたまるか。なんとか生き延びろ。

汚れた空気を吸うたび、喉が痛い。止まらない咳を袖で押さえ、涙でぼやけた視界で廟の中を見回す。

なにか、なにかないか……。

「宇俊!」

外から誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。

「主上、離れてください!」

初めて聞く、晋耕の叫び声。そしてもう一人は……。