皇帝が待っていると教えてくれたあの宦官が犯人か? まんまと騙されてしまったみたい。
とにかく、朝になって誰かが来てくれるのを待つしかない。廟には出入り口がひとつしかないのだから。
私は先帝像と目が合わない壁際に背をつけて座った。隣に提灯を置く。
少し肌寒いけど、仕方ない。寝ちゃえば怖くなくなる。
そうだよ。目を閉じて明日を待っていれば、晋耕が探しに来てくれるかも。
そろそろ、私がいないことに気づいてくれるころよね……。
目を閉じ、抱えた膝に額を預けて息を整えていると、つんと鼻に刺激臭が飛び込んだ。
「ふえ」
ぱっちり目を開け、そこらじゅうを見渡す。
廟には変わったところがない。
でも、たしかに匂う。これは、そう。煙だ。
私は立ちあがり、提灯を点検した。が、燃えてはいない。
それを持って跪拝台の奥にある香炉を照らしてみるが、当然煙は立っていない。
そうこうしているうちに、焦げたようなにおいが強くなる。