皇帝に素性が露呈してからも、私は宦官として今まで通りの生活を送っている。

「では君の不思議な力は、仙女の元にいたときに身につけたのだな」

乾清宮で、いつものように皇帝の代筆をしながら話をする。

「はい。あんまり使わないように言われています。奇術だということにしておいてください」

「そうだな」

皇帝は今日も楽な格好で、私が筆を走らせるのを見ている。

「あのう、このような時間があるなら、お妃さまの元へ行かれては?」

「ん?」

「主上は政で忙しいから、お妃さまたちに構っている暇がないとおっしゃいました」

忙しいのは事実だろうけど、私と遊んでいる暇があれば、今のうちに昼寝をして、夜に備えてもよさそうなのに。

「……君は俺に妃嬪の元へ行ってほしいのか」

椅子から降りた皇帝は、私の正面で机に肘をつく。

近くで見る彼の顔は、絵から飛び出てきたように整っている。

どぎまぎしてしまう自分を必死で隠し、すました顔を作った。