「真実を?」

「父が先帝を害する理由が、どうしてもわからないのです。もしかしたら」

「誰かが、そなたの父を陥れたのかもしれないと」

こくりとうなずく。その通りだ。

私は、真実が知りたい。たとえ、どれだけ遠い道のりだとしても。

「それなら、余も協力しよう」

「はい?」

「余も、先帝の暗殺を誰が企てたのか知りたい。結局、先帝は白家殲滅のあとで変死した」

約半年前、先帝が崩御した。

変死だというのは、晋耕に聞いて知っている。

「共に真実を探そうではないか」

口元に微笑を浮かべた皇帝に、思わず見惚れる。

初めて彼が笑ったところを見たような気がした。

「でも、もし私の父が本当に暗殺を企てたとしたら」

「ああ、いいいい。気にするな。あれは殺されても仕方ない暴君だった。だから俺は、君を逃がした。先帝に殺される人間をひとりでも減らしたかった」

普通の男の人のような話し方に、呆気に取られる。

いつも、「余」って。「そなた」って呼んでいたのに。

「生きていてくれてよかった」

そっと皇帝が私の肩を抱き寄せる。

広い胸から、ふわりと香のにおいがする。

鼻がツンと痛み、思わず涙が零れた。