見返すと、彼は糸目をさらに細くして微笑んだ。

『ある高貴な御方が、かわいそうな娘を見つけたら面倒を見てやれと言ってくださってるんですよ。だから、おいでなさい』

『え? それって……』

晋耕は黙って私に手を差し伸べた。

それ以上は聞くなということだろう。

私は彼の手を取った。

それから私は晋耕が紹介してくれた仙女の元で働きながら書の修業に明け暮れた。

そして数か月前、先帝崩御の報をお土産に、再び晋耕が現れた。

『今ならあなたに気づく者はいないでしょうね。どうです。後宮に来てみますか』

『後宮に……』

父が本当に暗殺を企てたのかどうか。

ずっと知りたかった真実を探るには、後宮入りは願ってもないこと。

だが女官になるにも、どこの家の出身かは必ず問われる。

『私が身元保証人になりましょう。あなたは宦官に化けるのです』

戸惑う私の背を押したのは、匿ってくれていた仙女だった。

『行きなさい、雨春。真実を知りたいのでしょう。それはあなたに必要なことです』

真実を知りたい。

閉じた瞼の裏に、燃える屋敷がよみがえる。