「お召し物が汚れます」

「汚れているのはそなただろう。宇俊、余はなにも男色の気があってそなたの服をはがそうというのではない」

思いもよらない単語が出てきて、涙が引っ込んだ。

まさか皇帝が私を男色の相手にしようなどと、考えてもみなかったから。

皇帝は弱ったように眉を下げ、小さく口を動かす。

「余にはどうも、そなたがただの宦官だとは思えぬのだ」

「え……」

どくんと心臓が跳ねる。

「その指の細さ、面差し、髪の質感。声色も、柳眉も、すべてが女子に見えてならん」

「だからそれは、若年で宦官になったからであって」

意識して低い声で答えると、皇帝はなにかに気づいたように声を大きくした。

「そうだ。そなたが本当に宦官なら、(パオ)を見せよ」

「えっ?」

「宦官ならば切り取った宝を保管してあるはずだ。持ってこい」

があんと陶磁器で頭を殴られたような衝撃を受けた。

ない。そんなもの、ない。だって私には生まれつきなかったんだもん。