皇帝は私の帯を掴み、強引に引っ張った。

緩んだ帯がしゅるりと足元に落ちる。

(ほう)を脱げ」

片手を私の顔の横につけ、にらむように見下ろす皇帝。

震えた私が動けないでいると、彼は自ら私の首元の(ボタン)に指をかけた。

最初から、いい印象の皇帝ではなかった。

妃嬪を大事にしない、冷たい人だと。

皇帝なのに子を成す務めを果たさない、変わった人だと。

私が戻らないときは、宦官の居室まで自らやってくるのに、妃嬪たちへの文は自分で書かない。

でも、こんな嫌がらせをする人だとは思わなかった。

だって、ここで再会する前に私の命を救ってくれたのに。慈悲深い人だったはずだ。

私を見下ろす瞳が揺らいだ。

そこに映る私の頬に、一筋雫が通っていく。

「すまない。泣くな」

釦から離れた指が、私の頬を撫でた。

「意地悪が過ぎた。余の負けだ」

落ちてきた鼻水を反射的にすすると、皇帝は私から少し離れ、袖で頬を拭き続ける。