梅の木に囲まれた別院の客間に押し込まれた私は、丸窓のある壁際に追い込まれた。

誰が置いていったのか、部屋の隅に着替えが入った箱がある。

「さあ、着替えるがよい」

壁に背をつけた私に、皇帝が詰め寄る。

黒真珠のような瞳に自分の姿が映る。

偽りの姿をした、男装の宦官が狼狽えている。

「主上の手を煩わせずとも、自分でできます」

視線で服をはがされているような屈辱を感じて目を逸らした。

いや、これは屈辱とは違う……ような気がする。単なる動揺なのか、それとも。

「余が汚したのだ。申し訳なかった」

腰の帯に手をかけられ、ぞっと悪寒が走った。

「いけません!」

私は皇帝の手を握って帯からムリヤリ離させる。

「……不敬な」

冷たい声に、ハッと手を引っ込める。

宦官が主上の手を握るなど、ありえない。

「わ、私のようなものの体を見たら、主上の御目が汚れてしまいます。お許しください」

「忠臣だな。本当の忠臣ならば、余に抗うな」