まさか、本当にふたりと食事をすることになろうとは。
高貴な人の食事は基本ひとりでするもので、宦官が同じ席について食べることはあり得ない。
緊張しつつ、すすめられるままに料理を口に運ぶと、すべてが吹っ飛んだ。
「ん~、おいしい! どれもおいしいです」
もう不敬罪で死刑にされてもいいかもしれない。いやダメだけど。
料理は皇帝に振舞われるだけあって、宦官の食事とは比べ物にならなかった。
最高級の食材で、手間暇かけて作るのだからおいしいに決まっている。
しっかり全種類、お腹いっぱい食べさせてもらった私に、皇太后が言った。
「満足してもらえてよかったわ。あなたにはこれからも、後宮の安寧のためにしっかり働いてもらいたいの。よろしくね、宇俊」
若いときは絶世の美女だったという皇太后は、年の割には皺の少ない肌で柔和に微笑む。
「御意」
私は座ったまま敬礼する。
「さあ、今日はこれでお開きにしましょうか」
皇帝が口を挟む間もなく、皇太后が手を鳴らした。行きに私を案内してきた女官がやってくる。