文字は火に集まる虫のように、はらってもはらっても寧徳妃の周りから離れない。

「このままだと、不妊の呪いがあなたに……」

「そうよっ、私がやったのよ! だからこれを消して!」

「御意」

自暴自棄気味に叫んだ寧徳妃。

私が手をかざすと、文字は紙に戻った。

「あなた、どうしてこんなことを」

徐貴妃に詰め寄られ、ぐったりとうなだれた寧徳妃は笑った。

「あなたが嫌いだからに決まっているでしょう。傷つけてやりたかったのよ」

「どうして。わたくしがあなたになにかした?」

いつも高慢な態度で怒りの沸点が低い徐貴妃は、自然と周りに嫌われる。

でも、個人的に嫌がらせをしたという話は聞いたことがない。

「愚かな人。後宮では、他の女はすべて敵よ。この呪符に効力がないですって? ちゃんとあるわよ。私は呪いを学んできたの」

寧徳妃がそう言った瞬間、呪符を持った私からざあっと人が退いた。

「主上の御子を最初に身ごもるのは、わたくしになるはずだった」