「あなた、わたくしに嫌がらせをしたばかりか、胡修儀に罪を着せようとしたの?」

「いいえ、わたくしはやっていません。その宦官は出まかせを言っているのですわ」

寧徳妃は泣きそうな顔で首を横に振る。胡修儀はふたりの様子を見てオロオロするだけだった。

まあたしかに、私しかわからないような微妙な筆跡の一致じゃ、説得力に欠けるよね。

「仕方ないですね。これはやりたくなかったんですが」

私は札を両手で挟んで目を閉じる。

「文字よ、主人の元にお帰り」

呟くと、手のひらから光が零れる。邪悪な念がこもった、赤い光。

手を開くと、呪符が宙に浮く。表面の血文字がぺりぺりと剥がれる。

「なん……だと?」

皇帝も皇太后も、そこにいるすべての人たちが目をまん丸くした。

剥がれた血文字は寧徳妃の頭の上をフワフワ漂う。

「気持ちを乗せた文字は、書き手を忘れません」

「いやっ、なによこれ!」

「そして呪いは、術師に返るのです」

「やめて!」