「書体は全然違いますが、細かい癖がそっくりです」

「全然わからないわ」

「ご本人はおわかりだと思いますよ」

私は文を書いた本人を見つめた。

「あなたさまの女官で、つい最近まで胡修儀さま付きだった人がいますね。彼女に胡修儀さまの薬を用意させ、呪符に焚きしめた。徐貴妃さまの宮に入り込んだのも彼女でしょう」

胡修儀の女官が入り込んだと徐貴妃の宮の者が証言したのは、下手人の女官が異動したことを知らなかったからだろう。

「ちょっと……黙ってないでなんとか言いなさいよ、(ねい)徳妃!」

徐貴妃が詰め寄ったのは、四夫人のひとりである寧徳妃。

私がさっきから見つめていた相手だ。

垂れ目の美人で、目元のほくろが印象的。

彼女の返歌は素晴らしく、印象的だったので筆跡までうっすら覚えていたのだ。

あの日、私は乾清宮で、皇帝に返ってきた文を隅から隅まで見返した。

その結果、寧徳妃の筆遣いが呪符のものと一致することを突き止めた。

女官の件や蛇の件は、私の仮説を固めるために彼女の周りを調べるうちに出てきた事実だ。