「自ら名乗れば罪を軽くしよう」

皇帝が言ったとき、ひとりの妃がぴくりと反応した。

だけど、彼女はぐっと唇を噛んで動かない。

「……誠に遺憾だ。宇俊、続けよ」

皇帝は眉根を寄せ、こちらを見下ろす。

「ええと、蛇の生き血ともうひとつ、犯人の手がかりになったものがあります。それはこの呪符の筆跡です」

「そんな文字に筆跡もなにもないじゃない」

四夫人のひとり、()淑妃が呆れたように言う。

その通り、古代文字を真似て書かれた呪符は、筆跡が出にくい。もともと亀の甲羅に刻んだ文字なので、筆と違いが出るのは当たり前。

「いや、でも細かい筆跡はごまかせないんですよ」

よいしょ、と私は胸元から一枚の紙を出した。

「これはとあるお妃さまから主上に書かれた文です。主上の文に書かれた歌への返歌ですね」

丸めた紙を広げる。