そんな世の中で宦官となった私の主な仕事は、書類の作成と物品管理。

試験のときに書いた文字がうまかったという理由で、八処の中の「殿」に配属された。

八つある処の上には、四つの司があり、宦官の組織はこの四司八処から成る。それぞれの部署の責任者が太監、太監の補佐をするのが少監。晋耕は少監にあたる。

今書いたのは、蔵書楼の前に立てる札。ただ「許可のない者立ち入るべからず」と書いただけ。

「こんな芸術的な立札は見たことありませんよ」

晋耕が糸のような目で笑い、墨が渇いた札をひょいと持ち上げる。

「札で褒められても」

私の目的は出世。宦官でも偉くなれば大きな権力を得ることができる。

「もっと大きな仕事がほしいなあ」

「大きなとは、例えば?」

主上(しゅじょう)の代筆、とか」

「それは思い切り大きく出ましたねえ」

声を出して笑った晋耕は片手で札を担ぎ、私の肩をぽんぽんと叩いた。

「そう焦らないことですよ」

太監と晋耕に続き、宦官たちが部屋を出ていく。