呪符騒ぎはすでに後宮じゅうに知れ渡っているらしい。

もちろん、徐貴妃が自分で周りに言いふらしたのだろう。

「余としても大変遺憾だ。こういうことがなくなるよう、呪符の検分をさせてもらった」

「まあ主上。わたくしのために……」

うれしそうに頬を染める徐貴妃を華麗に受け流し、彼は続ける。

今日の彼はきちんと髪を結い、冠を被っている。服は漆黒の冕服だ。

いつもより威厳が感じられる。けど、私は宦官の居室に乗り込んできちゃう、楽な格好の皇帝の方が好きだな。

「宇俊、これへ」

「は、ははっ」

突然名前を呼ばれ、シャキンと背が伸びた。

妃嬪たちに注目される中、私は呪符が入った箱を持ち、皇帝の元へ急ぐ。

「安心しろ徐貴妃。これは道士が作ったものではない。呪符の模倣であり、効果はないと考える」

広間に妃嬪たちのざわめきが潮のように広がる。

「それはよかったわね」

皇太后が微笑むと、徐貴妃が吠えた。

「しかし、侮辱と嫌がらせを受けたわたくしの心は、それではおさまりませんわ! せっかくいただいた主上からの文を破かれて、わたくし……」

扇で顔を隠す徐貴妃。