「主上とどんなお話をしたんです?」

こそこそと耳打ちしてくる晋耕。

説明してあげたいけど、今はその暇もない。

「私、急がないと」

「どこへ行くんです」

「主上が先に行っているんです。お待たせしたら殺されてしまう」

「ええ?」

わけがわからないという顔で晋耕は私の前からどいた。

「朝礼をのぞきにくれば、なにが起きたかわかりますから!」

私はそう言い捨て、振り返らずに回廊を走った。



皇太后の宮に着くと、朝礼はすでに始まっていた。

広間の奥に皇太后と皇帝が並んで座っている。

皇帝がこの後宮の朝礼に姿を現すのは、初めてのことだ。

妃嬪たちが心なしか浮き立っているのが雰囲気でわかった。

今日もむせかえるような香のにおいに鼻が曲がりそうになる。

「先日は大変なことがあったそうね、徐貴妃」

「はい。大変遺憾でございますわ」