「誰が書いたんだ……?」

二千年前の文字を真似て書いたとしても、いつもの癖を完全に消すことはできないはず。

「筆跡を見ているのか。胡修儀に関係するもの全員の筆跡を取るように言い渡そうか?」

「ちょっとお待ちください」

平行に見えて、一画目だけがほんの少し右肩上がり。角が丸い。止めは中途半端。

この癖と同じ癖を持っている人を、知っている気がする……。

「主上、お願いがございます」

呪符を持って見上げると、彼はこくりとうなずいた。


三日後の朝、私は皇太后の宮で行われる朝礼に赴いた。

「あっ宇俊」

乾清宮を出たところで、晋耕に出会った。

彼の糸目の下に黒いクマができている。

「おはようございます」

「存外元気そうですね」

晋耕は私の全身をジロジロと見た。

三日前の夜、私は晋耕がお茶を持ってくるのを待たずに、皇帝と一緒に乾清宮に向かった。

それから一度も自室に戻っていないので、心配していたようだ。

なにか私が皇帝を怒らせるようなことをして、処罰のために連れて行かれたとでも思ったのだろう。