「はい、実は」

私は徐貴妃の宮で見聞きしたことを素直に話した。

「これが件の呪符でございます。不妊の呪のようです」

「ふむ」

箱に入れたままの呪符を一瞥し、彼は眉間にシワを寄せた。

「こういうものは、個人で作れるものか?」

「いえ、普通は道士が書き、祈祷を行って念を入れるものでしょう」

「後宮に道士はおらぬぞ」

皇帝の一言にハッとした。目が覚めたような気がする。

私は箱の中の呪符を手に取った。

新しい紙が使われている。しかも香のにおいが残っているということは、ごく最近作られたものだということだ。

私はじっと呪符の文字を見つめる。

「呪われても知らんぞ」

「大丈夫です」

後宮に道士はいない。いかなる男子も立ち入りは許されないからだ。

だとしたら、この呪符は後宮の誰かが作ったものということになる。

後宮に誰かを呪えるほど強力な呪符を作れるような人材がいるとは思えない。効力はあったとしても微弱なものだろう。