「あの徐貴妃を黙らせるなんて、たいしたものですねえ」

「呪いは誰でも怖いですから」

目に見えないから、余計に怖いもの。それが呪いだ。

全てのものに霊が宿っているという考えはこの国に古くからあり、無病息災や家庭円満のお守りとする霊符ももともとあった。

同じように人を呪う呪符も当然のように存在するが、見るのは初めて。

箱を開けると、黄色い紙に朱液で文字が書かれたお札が一枚、ぺらっと入っている。

「これ……血かな?」

呪符をつまんで顔の近くに持ってくる。

朱液よりも黒っぽい。人間か家畜のものかわからないけど、血液だと思えばそう見えてくる。

くんくんと匂いを嗅ぐと、血液とはまた別の、独特な香りがした。鼻を突くような苦さと甘さが混じりあっている。

たしかに、胡修儀の宮のにおいに近い。

「古代文字ですね」

晋耕が言う通り、札に書かれているのは二千年くらい前、まだ紙がない時代に亀の甲羅に刻まれていた種類の文字だ。