徐貴妃の殿舎に、多くの女官や宦官が集まっていた。

庭に面した回廊に立っているのが徐貴妃。

季節の花が咲く美しい庭に土下座させられているのが胡修儀付きの女官だろう。

「らちが開かないわね。誰か早く胡修儀を呼んでいらっしゃい」

眉も目も吊り上がった徐貴妃が、低い声で命令する。相当ご立腹のようだ。

女官はひれ伏して震えるばかりで、さっぱり様子がわからない。

「おや宇俊、こんなところでなにを」

「少監」

声をかけてきたのは晋耕だ。

「主上に様子を見てくるように言われたのですが、いったいなにがあったのです」

ひそひそと話すと、晋耕は満面の笑みで事情を説明しだした。

彼が言うには、徐貴妃の文箱が誰かに荒らされたらしい。

徐貴妃が皇帝からの(正しくは私が書いた)文を読み返そうと、保管していた箱を開いたら、文は引き裂かれており、代わりに呪符が残されていた。

誰がこんなことをしたのかと怒り狂った徐貴妃は、胡修儀の女官が宮の近くにいたという証言を得て、本人を尋問しているらしい。