「余の手を持ち、筆を動かせ」

ということは、童子のように私が彼の手を操って覚えさせるってこと?

「でででできかねます。私のような者が主上のお手に触れるなど」

私はその場にひれ伏した。

皇帝の書の欠点を指摘するだけでも、本来なら不敬罪で投獄ものだ。

「そうか、そなたの小さな手では余計に教えにくいな」

そういうことじゃない。けど、納得してくれたならそれでいい。

顔を上げると、ぐいと腕を引かれた。

気づけば私は卓の前に座らされ、皇帝が背後にぴったりと寄り添っていた。

「ほら、筆を持て」

彼の長い腕が私の前を動き、右手に筆を握らせた。

「余がそなたの手を握っている。そなたはいつも通りに書くがよい」

「え、あの」

「そなたの手の動きを覚える」

あ、なるほど~。って!

包まれた手が熱い。背中には皇帝の胸がくっつき、首筋に息がかかる。

「震えているな。そう緊張せずともよい。皇帝も所詮はただの人よ」

ひゃああああ~!

耳元でささやかれ、発狂しそうになった。