ちなみに四夫人九嬪が集まった広間は臭い。いろんな匂いが混じり、気持ち悪くなる。

「ほら、最初はなんて書く」

「ええと……」

私が考えてきた文言を皇帝が筆で起こしていく。

「なにかがおかしいな」

皇帝が出来上がった文を見て首を傾げる。

「達筆でいらっしゃいます」

「ううむ、そなたの書くものとなにが違うのか」

褒めたけど、本人は納得いっていなさそう。

「恐れいりますが、多分文字の均衡ではないかと」

「均衡?」

「主上のお手は、紙の上に集まっていらっしゃるでしょう。言葉の切れ目を変え、大きさや始まりの位置を少しずらし……」

説明を聞いたあと、皇帝はふむと鼻を鳴らし、書き損じをぐしゃぐしゃに丸めて放った。

ああもったいない。高級な紙が。まだ練習に仕えるのに。

捨てられた書き損じの皺を伸ばしていると、皇帝から声がかかった。

「宇俊、余の手を持て」

「はいっ?」

顔を上げると、もう新しい紙が用意されていた。