「俺は今あのときに戻ったとしても、必ず貴様を斬っていた」
龍胆は、にやりと笑った。
「りんどう、さま・・・」
雪はぽろぽろと涙を流した。
知らなかった。彼は、隠し事ばかりだ。
(でも、そうさせてしまっているのは、わたしなの・・・?)
雪は餓鬼と龍胆を見つめる。両者とも満身創痍。餓鬼は右手を菫に食いちぎられている。龍胆は胸の空洞が塞がらない。
椿の花の甘い香りが漂う。

そして、そのときは訪れた。
互いに踏み込む。
もと人間だった者同士の、鬼の一撃は壮絶だった。
龍胆の刀は餓鬼の腕を粉砕すると、そのままの勢いで体を真っ二つに切り裂いた。
餓鬼は眼を見開く。
「ガッ・・・!」
うめき声を上げ、膝をつく。切り離された上半身は地に投げ出される。
そしてそのまま、動かなくなった。