「雪・・・。この子にどんなしつけをしたんだい?」
階段をのろのろ上がってきた二人組を見て、雪は目をむいた。龍胆の体中に小さな歯型があちらこちらについていた。
菫は、まだたりないと龍胆の頭に噛みついたままだ。
泣きながら、ガジガジ、かじりついている。
「ごめんなさい・・・?」
「疑問形にするな。はやくこの妖怪を外してくれ」
はずせと言われても。――雪は瞬く。こんな菫を始めてみたのだ。
菫は普段はとてもいい子。雪を困らせたことは一度もない。
こんなにあるがまま大泣きすることも。
ましてや人に噛みつくことなどあり得なかった。
(それだけ、鬼さんのことが気に入ったのかしら)
だとすれば喜ばしい。
ほほえんで見守る雪。龍胆は「なぜ嬉しそうなのだね!?」と困惑した。