この村では、健康でなければ餓死を待つのみ。

そう悟ったのは、まだ幼い頃。
相次ぐ農作物の不作。
疫病の蔓延。
親のない子供が口減らしに合うのは、当然の流れだったのかもしれない。
森に放り捨てられなかったのは、村人に最後に残った良心だろう。馬小屋のすみ、藁を敷かれた狭い空間が、私の病床となった。
食事は、村の子供達が情けで分けてくれたものくらい。
それでも、私は生きた。
天から与えられた寿命が、長かったのか。
はたまた、悪運が強いだけだったのか。
今年で、十九になる。
無論祝いなどされるはずもなく、病で死にかけた私にとって、苦痛が伸びただけだ。
カビ臭い湿気った藁の上で、寝返りをうつ。激しく咳き込んだ。口を抑えた手のひらを見れば、ああ、血で汚れている。
「神様。・・・もう、許して・・・・・・・・」
もう助かる見込みのないこの体。
乾いた砂のようなこの干からびた魂を、救う気がないのなら。
いっそのこと、終わりにしてほしい。
しかし、声は、朝の霧の中に溶けていく。
天は聞き入れる気がないようだった。無情にも、朝日が馬小屋に差し込む。
私はうらめしげに目を細め、ゆっくりと目を閉じた。
――神様が受け取らないなら、
「私の魂など、鬼にでもくれてやろうか・・・」


この言霊を、『彼』が聞いていたのかはわからない。

そして私も、このとき吐いた言葉を、次に目覚めたときには覚えていなかった。