「できるのですか!?」

 できないと思っていただけに、玲燕は驚いて聞き返す。

「そういうことをなんとかするのが、俺の役目なのだろう?」

 涼やかな眼差しをまっすぐに返されて、玲燕はきょとんと天佑を見返す。

(もしかして天佑様って……、すごい負けず嫌いっ!)

 鬼火騒ぎの犯人捜しに協力してほしいと要請されたときに玲燕が放った『そこをなんとかするのが天佑様の役目でしょう?』という言葉を根に持っているのは明らかだ。

「手はずが整ったら、連絡する」

 そう言って立ち上がった天佑は、ふと何かを思い出したように動きを止める。

「ああ、あとこれを。忘れるところだった」

 天佑が懐から何かを取り出す。差し出されたのは紺色の布袋だった。受け取ってみると、ずしりと重い。

「なんですか、これ?」
「俸禄(ぼうろく)だ」
「俸禄?」

 玲燕は布袋を見た。

(偽の妃なのに、そんなものを受け取ってしまっていいのかな?)

 俸禄とは、妃を含め官職に就く者達に支給される給与のことだ。
 玲燕は恐る恐るその袋を開ける。中には銀貨が何枚か入っているのが見えた。

「こ、こんなに!?」