すっかり肩を落とした様子の岡島様が退出し、残された正輝と私に帷様が視線を移す。
「お前達の煽りもなかなかであったな」
「俺、いりましたか?」
ムッとした顔の正輝がいつもの調子で帷様に尋ねる。
(確かに正輝はいらなかったかも)
私は内心思う。
「お前の三味線が聞けただろうに。それだけで充分だ」
「つまり裏を返すと、俺はそれだけの為にここにいると……」
「まぁ、用心棒代わりに置いておいただけだからな。お前が忙しいようでは困る」
「それはそうですけど」
正輝は口を尖らせたものの、納得したようでそれ以上帷様に物申す事はなかった。
「さて、それでは最後の仕上げを行うぞ」
そう言うなり、帷様は立ち上がる。
「あっ、ちょっと待って下さい」
私は慌てて声をあげる。
「何だ?何か問題でもあるのか?」
帷様が進めようとした足を止め、私を振り返る。
「どうせ碌なことじゃないんだ。帷様、こいつはいいから、早く行きましょう」
既に部屋を出ようと、襖に手をかけていた正輝も立ち止まり振り返る。
(うっ、確かに碌な事じゃないかもだけど)
どうしても確かめたい事があるのだから、仕方がない。
「無礼を承知で申し上げます。私はあの部屋が気になります」
正座したまま、私はピシリと奥の間に続く、羽ばたくキクイタダキが描かれた見事な襖を指差す。
「あちらは寝室だが……」
帷様が困惑した表情を浮かべる。
「噂によると、公方様のお布団は見事にもっこりしてらっしゃると。それをこの目で確かめたいのです」
「もっこり……お前さ、もっと別の言い方があるだろうに」
何故か正輝は呆れたような顔をする。
「ふむ……そういうことなら、見てみるか?」
意外にも、帷様があっさりと奥の間へと繋がる襖を開ける。するとそこには予想通り、上段中央に見事な布団が敷かれていた。
私は慌てて立ち上がると、襖を開けた帷様の脇に立ち、遠慮なく中を覗き込む。
「これはまた立派な……」
思わず感嘆の声をあげてしまうほど、素晴らしい布団である。
「……もっこり具合もいいですね」
私は薄暗い部屋の中で光り輝く寝具をもっと良く観察しようと目を凝らす。
「いや、普通だと思うのだが」
帷様は何気なく言う。
「これが普通とか、その感覚が普通じゃないですよ」
正輝が最適解な指摘を口にする。
(そうよ、これが普通だなんてありえない)
紅縮緬で金襴の縁取りがされた、二枚重ねの分厚い敷布団。
その上にはここからでは分かりづらいが、純白の幸織らしき、掻巻が敷かれている。さらにその上に乗せられた掛け布団は、贅沢にも四枚もうず高く積みあげられていた。
(しかも、鶴、亀に松竹梅の模様入り)
目の間に敷かれた布団は、まさに艶麗という言葉がぴったりとくる見事さだ。
「め、めでたさが渋滞している」
私は感極まったまま、感想を漏らす。
「めでたさ?あぁ、これのことか?」
帷様が部屋に入り、掛け布団をペラリとめくった。私はコクコクと頷く。
「寝てみるか?」
「えっ、そ、そ、そ、そんな……いいんですか?」
まさかの提案に、私は動揺する。
「ああ、かまわない」
帷様は「さぁ」と言った感じで、掛け布団を四枚同時にめくりあげた。
(あんなフカフカで豪華な布団に寝転がれるなんて、多分この機会を逃したらない。けど……)
「い、いえ、でも、それは流石に畏れ多いというか……公方様の大切なお布団でございますし」
私は断腸の思いで、ありがたい申し出を辞退する。
「そうか。というか、綺麗なままだと何かとまずいか……」
布団を持ったまま、帷様が考え込む様子を見せた。
(確かに美麗様は私が奥泊りをするって思ってるわけだし)
ここは遠慮なくと、私は部屋に足を踏み入れる。
「待て。予定では今日で全てが解決するのですから、特に乱さなくても良いかと」
正輝が私の腕をグイとつかむ。
「そうだけど。万が一って事もあるし」
私は正輝の腕を振りほどこうともがく。
「どうであれ、公方様の布団に寝転ぶなんて事自体が不敬だぞ」
「でも、公方様御本人がいいって言ってるんだし」
私はまたとない機会を前に、正輝を必死に説得する。
「……まぁ、そう、だけど」
正輝がチラリと帷様に意味ありげな視線を送った。
「お前達、何を揉めている?」
私達の様子を見て、帷様が不思議そうな顔をした。
「こんな豪華なお布団に寝転ぶ機会なんて、もう二度とないかもしれないのに、正輝が不敬だって言うんです」
私は力説する。
「不敬すぎるだろ」
「でも帷様はいいって言ってるじゃない」
「それはだから」
堂々巡りし始める私達の会話。
「寝転ぶくらい、許してやれ」
「はっ!?それは神聖なものです。ですから」
帷様の言葉に、正輝が不服そうな声をあげる。
「たかが布団だろうに」
帷様の言葉を聞き、私は決意した。
「失礼しますッ!!」
正輝の手を振り切った私は布団に向かって大きく身を投げる。
ポフン。
(何このふわふわ)
私は目を閉じた。そして背中に当たる、これでもかというくらい、綿が分厚く詰めてある敷布団の感触を味わう。
「あぁ、幸せ」
思わずため息が出るほどの心地良さだ。
「お前は本当に……兄として恥ずかしいのだが」
呆れたような正輝の声が聞こえてくる。
「気に入ったか?」
私の体の上に掛け布団をかけながら、帷様が問いかける。
「もはや極楽です。私も仕事を頑張って、こういうお布団で毎日寝られるようになりたいと思いました」
私は願望を口にする。
「小さな願いだな」
帷様がクスリと笑った。
「小さいですかね?贅沢すぎて、夢物語な気しかしません」
「お前さ、五欲にのみこまれまくってるけど、大丈夫か?」
帷様の横に立つ正輝が私に軽蔑の眼差しを向けた。
「五欲は己を見失うので、捨て去るべきである……」
私は忍術伝書の一つ。『当流奪口忍之巻駐』に書かれていた言葉を口にした。それによると五欲とは、財欲、色欲、飲食欲、名欲、睡眠欲だとされている。
(確かに私は今、人間が抱く欲に溺れかけている)
私はふかふかの感触を最後にしっかりと体に刻み込み、後ろ髪惹かれる思いで、布団から起き上がる。
そしてふと目にしたのは、部屋を仕切るように置かれた屏風だ。
金箔が貼られ、掛け布団と同じように鶴と亀が描かれた見事な屏風は、おめでたい事この上ない。
(だけど、気になる)
不自然に立てられた屏風の向こうには、一体何が隠されているのか。
「あのう、そっちには何があるんですか?」
私は屏風に顔を向け、誰ともなく尋ねる。
「あぁ、こちらには添い寝役の布団が敷かれている」
「添い寝役ですか?」
(赤子でもないのに?)
脳裏に甥っ子である蘭丸の横に一緒に寝転び、背中をトントンと優しく叩き、寝かしつけていた私の穏やかな日々が蘇る。
(蘭丸……可愛い子。でも大人は一人で寝られるし)
添い寝役が必要だなんて、帷様は極度の寂しがり屋さんなのだろうかと、私は首を傾げる。
「お前が気に入り、今入っている布団の横にあるのが、夜伽相手となる者の布団だ」
ふむふむと頷く。
「そして屏風の向こうには、もう一組布団が用意され、添い寝役の御中臈が布団に横になりながら聞き耳を立てておくという仕組みになっている」
「えっ!?」
(それって)
夜伽の間、第三者。しかも大奥で寵愛を争う相手が隣にいるってことだろうか。
驚きの事実に言葉を失う。
「その他にも御伽坊主と呼ばれる老女が、御次の間に控えているらしい」
正輝が更に衝撃的な事実を付け加えた。
「な、なるほど。公方様のありがたき寝言などを聞き漏らさないためなんですね」
尊い方の一言一句は、例え寝言だとしても聞き漏らしてはならない。だからきっとこのような、あり得ない状況が生み出されているに違いない。
「いいや、過去に夜伽の甘い雰囲気を利用し、私利私欲にまみれた願い事を口にする者が絶えなかったからだ」
帷様が私の思いつきを見事断ち切った。
(えっ、そっちなの?)
「後は、本当にその日に交わりがあったかどうか。それも確認できるし」
正輝がさも事情通といった感じで得意げな顔になる。
「確認って一体どういうことよ?」
無知な自分に対し、幾分悔しい気持ちを抱えながら正輝に真相をたずねる。
「身籠った子が、確かに公方様のお子かどうか、夜伽のあった日から逆算すればわかるだろう?」
「……そ、そうなんだ」
(ここは徹底して男性を排除した場所だよね?)
つまり将軍以外の男性とは、出会う機会すらないはずだ。
(それなのに、ここまできっちり監視されているだなんて)
東雲本家のお世継ぎという存在は、小指の爪ほど疑いがあってはならない。それだけ別格な存在だという事。
(そしてこのお布団で、次世代のお世継ぎが誕生するかも知れないわけで……)
私はようやく、自分が如何に不敬な事をしているかを悟る。
「帷様、貴重な機会をありがとうございました」
私はおずおずと布団から這い出す。そして布団の脇に立つ帷様を見上げる。
(誰にも聞かれたくはない、神聖なる夜伽までもが監視されているだなんて)
「そりゃ、逃げ出したくなる気持ちもわかります」
私は帷様に同情する視線を送ったのであった。
「お前達の煽りもなかなかであったな」
「俺、いりましたか?」
ムッとした顔の正輝がいつもの調子で帷様に尋ねる。
(確かに正輝はいらなかったかも)
私は内心思う。
「お前の三味線が聞けただろうに。それだけで充分だ」
「つまり裏を返すと、俺はそれだけの為にここにいると……」
「まぁ、用心棒代わりに置いておいただけだからな。お前が忙しいようでは困る」
「それはそうですけど」
正輝は口を尖らせたものの、納得したようでそれ以上帷様に物申す事はなかった。
「さて、それでは最後の仕上げを行うぞ」
そう言うなり、帷様は立ち上がる。
「あっ、ちょっと待って下さい」
私は慌てて声をあげる。
「何だ?何か問題でもあるのか?」
帷様が進めようとした足を止め、私を振り返る。
「どうせ碌なことじゃないんだ。帷様、こいつはいいから、早く行きましょう」
既に部屋を出ようと、襖に手をかけていた正輝も立ち止まり振り返る。
(うっ、確かに碌な事じゃないかもだけど)
どうしても確かめたい事があるのだから、仕方がない。
「無礼を承知で申し上げます。私はあの部屋が気になります」
正座したまま、私はピシリと奥の間に続く、羽ばたくキクイタダキが描かれた見事な襖を指差す。
「あちらは寝室だが……」
帷様が困惑した表情を浮かべる。
「噂によると、公方様のお布団は見事にもっこりしてらっしゃると。それをこの目で確かめたいのです」
「もっこり……お前さ、もっと別の言い方があるだろうに」
何故か正輝は呆れたような顔をする。
「ふむ……そういうことなら、見てみるか?」
意外にも、帷様があっさりと奥の間へと繋がる襖を開ける。するとそこには予想通り、上段中央に見事な布団が敷かれていた。
私は慌てて立ち上がると、襖を開けた帷様の脇に立ち、遠慮なく中を覗き込む。
「これはまた立派な……」
思わず感嘆の声をあげてしまうほど、素晴らしい布団である。
「……もっこり具合もいいですね」
私は薄暗い部屋の中で光り輝く寝具をもっと良く観察しようと目を凝らす。
「いや、普通だと思うのだが」
帷様は何気なく言う。
「これが普通とか、その感覚が普通じゃないですよ」
正輝が最適解な指摘を口にする。
(そうよ、これが普通だなんてありえない)
紅縮緬で金襴の縁取りがされた、二枚重ねの分厚い敷布団。
その上にはここからでは分かりづらいが、純白の幸織らしき、掻巻が敷かれている。さらにその上に乗せられた掛け布団は、贅沢にも四枚もうず高く積みあげられていた。
(しかも、鶴、亀に松竹梅の模様入り)
目の間に敷かれた布団は、まさに艶麗という言葉がぴったりとくる見事さだ。
「め、めでたさが渋滞している」
私は感極まったまま、感想を漏らす。
「めでたさ?あぁ、これのことか?」
帷様が部屋に入り、掛け布団をペラリとめくった。私はコクコクと頷く。
「寝てみるか?」
「えっ、そ、そ、そ、そんな……いいんですか?」
まさかの提案に、私は動揺する。
「ああ、かまわない」
帷様は「さぁ」と言った感じで、掛け布団を四枚同時にめくりあげた。
(あんなフカフカで豪華な布団に寝転がれるなんて、多分この機会を逃したらない。けど……)
「い、いえ、でも、それは流石に畏れ多いというか……公方様の大切なお布団でございますし」
私は断腸の思いで、ありがたい申し出を辞退する。
「そうか。というか、綺麗なままだと何かとまずいか……」
布団を持ったまま、帷様が考え込む様子を見せた。
(確かに美麗様は私が奥泊りをするって思ってるわけだし)
ここは遠慮なくと、私は部屋に足を踏み入れる。
「待て。予定では今日で全てが解決するのですから、特に乱さなくても良いかと」
正輝が私の腕をグイとつかむ。
「そうだけど。万が一って事もあるし」
私は正輝の腕を振りほどこうともがく。
「どうであれ、公方様の布団に寝転ぶなんて事自体が不敬だぞ」
「でも、公方様御本人がいいって言ってるんだし」
私はまたとない機会を前に、正輝を必死に説得する。
「……まぁ、そう、だけど」
正輝がチラリと帷様に意味ありげな視線を送った。
「お前達、何を揉めている?」
私達の様子を見て、帷様が不思議そうな顔をした。
「こんな豪華なお布団に寝転ぶ機会なんて、もう二度とないかもしれないのに、正輝が不敬だって言うんです」
私は力説する。
「不敬すぎるだろ」
「でも帷様はいいって言ってるじゃない」
「それはだから」
堂々巡りし始める私達の会話。
「寝転ぶくらい、許してやれ」
「はっ!?それは神聖なものです。ですから」
帷様の言葉に、正輝が不服そうな声をあげる。
「たかが布団だろうに」
帷様の言葉を聞き、私は決意した。
「失礼しますッ!!」
正輝の手を振り切った私は布団に向かって大きく身を投げる。
ポフン。
(何このふわふわ)
私は目を閉じた。そして背中に当たる、これでもかというくらい、綿が分厚く詰めてある敷布団の感触を味わう。
「あぁ、幸せ」
思わずため息が出るほどの心地良さだ。
「お前は本当に……兄として恥ずかしいのだが」
呆れたような正輝の声が聞こえてくる。
「気に入ったか?」
私の体の上に掛け布団をかけながら、帷様が問いかける。
「もはや極楽です。私も仕事を頑張って、こういうお布団で毎日寝られるようになりたいと思いました」
私は願望を口にする。
「小さな願いだな」
帷様がクスリと笑った。
「小さいですかね?贅沢すぎて、夢物語な気しかしません」
「お前さ、五欲にのみこまれまくってるけど、大丈夫か?」
帷様の横に立つ正輝が私に軽蔑の眼差しを向けた。
「五欲は己を見失うので、捨て去るべきである……」
私は忍術伝書の一つ。『当流奪口忍之巻駐』に書かれていた言葉を口にした。それによると五欲とは、財欲、色欲、飲食欲、名欲、睡眠欲だとされている。
(確かに私は今、人間が抱く欲に溺れかけている)
私はふかふかの感触を最後にしっかりと体に刻み込み、後ろ髪惹かれる思いで、布団から起き上がる。
そしてふと目にしたのは、部屋を仕切るように置かれた屏風だ。
金箔が貼られ、掛け布団と同じように鶴と亀が描かれた見事な屏風は、おめでたい事この上ない。
(だけど、気になる)
不自然に立てられた屏風の向こうには、一体何が隠されているのか。
「あのう、そっちには何があるんですか?」
私は屏風に顔を向け、誰ともなく尋ねる。
「あぁ、こちらには添い寝役の布団が敷かれている」
「添い寝役ですか?」
(赤子でもないのに?)
脳裏に甥っ子である蘭丸の横に一緒に寝転び、背中をトントンと優しく叩き、寝かしつけていた私の穏やかな日々が蘇る。
(蘭丸……可愛い子。でも大人は一人で寝られるし)
添い寝役が必要だなんて、帷様は極度の寂しがり屋さんなのだろうかと、私は首を傾げる。
「お前が気に入り、今入っている布団の横にあるのが、夜伽相手となる者の布団だ」
ふむふむと頷く。
「そして屏風の向こうには、もう一組布団が用意され、添い寝役の御中臈が布団に横になりながら聞き耳を立てておくという仕組みになっている」
「えっ!?」
(それって)
夜伽の間、第三者。しかも大奥で寵愛を争う相手が隣にいるってことだろうか。
驚きの事実に言葉を失う。
「その他にも御伽坊主と呼ばれる老女が、御次の間に控えているらしい」
正輝が更に衝撃的な事実を付け加えた。
「な、なるほど。公方様のありがたき寝言などを聞き漏らさないためなんですね」
尊い方の一言一句は、例え寝言だとしても聞き漏らしてはならない。だからきっとこのような、あり得ない状況が生み出されているに違いない。
「いいや、過去に夜伽の甘い雰囲気を利用し、私利私欲にまみれた願い事を口にする者が絶えなかったからだ」
帷様が私の思いつきを見事断ち切った。
(えっ、そっちなの?)
「後は、本当にその日に交わりがあったかどうか。それも確認できるし」
正輝がさも事情通といった感じで得意げな顔になる。
「確認って一体どういうことよ?」
無知な自分に対し、幾分悔しい気持ちを抱えながら正輝に真相をたずねる。
「身籠った子が、確かに公方様のお子かどうか、夜伽のあった日から逆算すればわかるだろう?」
「……そ、そうなんだ」
(ここは徹底して男性を排除した場所だよね?)
つまり将軍以外の男性とは、出会う機会すらないはずだ。
(それなのに、ここまできっちり監視されているだなんて)
東雲本家のお世継ぎという存在は、小指の爪ほど疑いがあってはならない。それだけ別格な存在だという事。
(そしてこのお布団で、次世代のお世継ぎが誕生するかも知れないわけで……)
私はようやく、自分が如何に不敬な事をしているかを悟る。
「帷様、貴重な機会をありがとうございました」
私はおずおずと布団から這い出す。そして布団の脇に立つ帷様を見上げる。
(誰にも聞かれたくはない、神聖なる夜伽までもが監視されているだなんて)
「そりゃ、逃げ出したくなる気持ちもわかります」
私は帷様に同情する視線を送ったのであった。