あなたの回りで一番ちゃらんぽらんな男の人を思い浮かべてください。
髪の毛を薄い茶色に染めていませんか? 袖の長いゆるゆるな服を着ていませんか? なんか眠そうな目をしていませんか?
笑っていませんか?
わたしが思い浮かべる小笠原先輩は、いつも笑顔です。
ちゃらんぽらんな人って、心に冷蔵庫がないんだと思います。
とりあえずこれはここにしまっておこう。そういうものがない。目についたものを目についた時に食べてしまう。だからとても高くて美味しい神戸牛をなんでもない日に食べたり、とても大事な記念日になんでもないグラム百円以下の豚バラ肉を食べたりする。本人はそれで「おいしー」とか言っているからいいですけど、周りは驚きますよね。「そこでそれ食べちゃう?」みたいな。
都内の大学の教育学部に入って一年目の春、お父さんの趣味を受け継ぐ形でビリヤードサークルに入ったわたしが出会った小笠原先輩は、まさにそういう人でした。女顔で、細身で、髪を薄い茶色に染めていて、首元がゆるんだダボダボの服をよく着ていて、そして、とにかく優先順位がめちゃくちゃ。「給料日まで一日三百円で生きなくちゃいけないんだけどどうしよー」とか言っている最中に、透明な筒に入ったボールを下から空気で浮かすどーでもいいインテリアを買う。お金と時間をノリで使ってしまうからいつも金欠で、三年生なのに二年間で取った単位は四でした。最初は二年も通っていて四単位は酷いなあと思っていたけれど、今ではよく四単位も取れたと思います。
そんな小笠原先輩は、マスコットというか、珍獣というか、そんな扱いですけど、サークルのみんなには好かれていました。つかみどころがない。形がない。だから当然、裏表もない。そういうところが好かれていたんだと思います。
小笠原先輩はその中でも特に、同じ三年生の同期三人と仲良くしていました。
船井正太郎先輩。大学では社会学部に入り、サークルでは幹事長をやっている、背の高い真面目で常識人な先輩です。そして真面目な常識人ほど小笠原先輩には振り回されます。小笠原先輩は一人暮らしをしている船井先輩の部屋の合鍵をなぜか持っていて、無料休憩所ぐらいの感覚で使い倒していました。大学から帰っていたら寝ていたりするそうです。
長野真衣先輩。大学では法学部に入り、サークルでは副幹事長をやっている、ふわふわした髪がとても可愛い女性の先輩です。だけどサークル内で可愛いという評価はあまり聞きません。サークルの集まりがあると「ひょっとこの顔真似」とかで執拗に笑いを取りに来るからだと思います。小笠原先輩は「マイは男とか女じゃなくてマイだよね」と言及していました。
安木貴弘先輩。大学では生物学部に入り、サークルでは会計をやっている、頭の良さそうな眼鏡が特徴的なあまり喋らない先輩です。そしてたまに喋ると「手がカマになるという攻撃特化過ぎる進化を遂げたカマキリの底知れぬ悪意について」とか不思議なことを話します。小笠原先輩は、安木先輩のそういう不思議なところがとても好きなようです。
わたしたちのサークルは、ただ活動日に行きつけのビリヤード場に集まってビリヤードをするだけのサークルです。ビリヤード場やビリヤード団体が主催する試合に出たりもします。そういう活動日や試合の後、小笠原先輩が「この後、船井君の部屋行こうかー」と言い出して、お酒を飲んだりゲームをしたり映画を見たりする。小笠原先輩たちは、そういう仲間でした。
サークルに入ってすぐ、その仲間にわたしも割り込みました。仲良くしていた長野先輩から船井先輩の部屋に行くのに誘われて、ついて行ったらわたしも一員になった感じです。他の一年生の女の子がみんなすぐに来なくなってしまったのもあって、わたしは同期よりも小笠原先輩たちと遊ぶことの方が多い、少し変な立ち位置の一年生になっていました。
六月のあの金曜日も、わたしたちは船井先輩の部屋でジェンガをやっていました。ただのジェンガではなく、抜いたブロックに指令が書いてあったらそれを実行しなくてはならない面白ジェンガです。
「じゃあ、次、行きまーす」
小笠原先輩がブロックを一本抜きました。もっと楽なところがあるのに変なところから抜くから、小笠原先輩はジェンガが下手くそです。でもその時は綺麗に抜くことが出来ました。
「あー、『秘密を一つ暴露して下さい』だって」
あけすけで、ちゃらんぽらんで、隠し事なんか何にも無さそうな小笠原先輩の秘密。わたしはワクワクしていました。もしかして小笠原先輩の恋愛話とか聞けるかもしれない。そんなことを考えていました。
阿呆だったなあと思います。
「こないだ倒れて、病院行ったんだけどー」
倒れた。病院。部屋がほんの少し冷たくなりました。
「俺、余命半年って言われちゃいましたー」
小笠原先輩は、へらへら笑っていました。
だけど笑っているのは小笠原先輩だけでした。わたしも、長野先輩も、船井先輩も、安木先輩も笑っていませんでした。小笠原先輩は適当なことは言うけれど、嘘は言わない。みんな、それを知っていました。
最初に反応したのは、船井先輩でした。
「はあああああああああ!?」
船井先輩は声が大きいです。わたしは驚いて、テーブルの足に膝をぶつけてしまいました。ジェンガがガラガラと、大きな音を立てて崩れました。
「なんかー、大腸に癌があるらしくって、もう無理なんだって。でさー、若いと癌の進行が早いって言うじゃん。あれ嘘なの知ってた? 癌細胞ってバラバラに出来るパターンとまとまって出来るパターンがあって、それでバラバラの方が進行早いんだって。でー、若いとバラバラで出来ることが多いから結果的に早く見えるらしいよ。全然知らなかったわー。それからー」
小笠原先輩はぺらぺらと詳細を話してくれました。病院で飲んだ野菜ジュースがとんでもなく不味かったところまで含めて、ひたすら喋り続けました。そして分かったことは、小笠原先輩が末期の大腸癌ということだけでした。
小笠原先輩に任せていると情報が増えないので、こちらから質問攻めにしました。そして余命は短くて半年だということ、本当にマズくなるまで入院治療はせずにいつも通り余生を過ごすと決めたこと、いつも通りの生活の中に「大学に行く」がなぜか無かったから大学は辞めたこと、ついでにバーテンのバイトも辞めたこと、一人暮らしのアパートを引き払って今は実家にいることを引き出しました。
「でさー、これ、誰の負けなの?」
質問が止んだところで、小笠原先輩が机の上のジェンガを指さしました。どうでもいいです。本当に。
わたしと船井先輩と長野先輩は動揺していました。安木先輩はいつも通りでした。安木先輩はいつ何があっても不気味なぐらいに落ち着いています。船井先輩に「どうする?」と尋ねられ、安木先輩はおもむろに口を開きました。
「グーグルを開こう」
安木先輩はよく「AのためにBをしたいからまずCをしよう」のCのところだけを話します。そういう時は詳しい話を聞かないと会話が成り立ちません。今回は「今後の生き方を考えるため、『死ぬまでにしたい10のこと』という若くして余命宣告を受けた主人公が死ぬまでにやりたいことのリストを作り実行する映画を見たいから、どうすればネット配信で映画を観られるかグーグルで調べよう」ということでした。
誰も反対はしなかったので、わたしたちは『死ぬまでにしたい10のこと』を配信しているサイトを調べ、船井先輩が会員登録をしました。テレビをモニターにして配信サイトを映すと、小笠原先輩が「あれ観たいんだけどあるかなー」と言って全く関係のないアニメ映画を検索し始めましたが、みんな文句は言いませんでした。検索して出てきた映画をそのまま再生しようとした時は、さすがに船井先輩が「ちょっと待て!」と制しました。
『死ぬまでにしたい10のこと』は、とても良い映画でした。
わたしも泣きましたが、船井先輩はその十倍ぐらい泣いていました。見終わった後は小笠原先輩に抱き付いて「小笠原、死ぬなー!」と叫んでいました。船井先輩は声が大きいです。たぶん、隣の部屋の人はすごく困惑していたと思います。
「お前、何かしたいことないのか!? 何でも言え! 俺たちが実現してやる!」
船井先輩がドンと胸を叩きました。俺じゃなくて、俺たち。勝手に巻き込まれているけれど、それに不満を言う人はいませんでした。別に当たり前のことだと、みんな思っていました。
そんなだから、わたしたちはいつも小笠原先輩に振り回されるのです。
「えー、じゃあー」
小笠原先輩が、ぐるりとみんなを見回しました。
「みんな、『DRAGON』ってサークル知ってる?」
わたしは知りませんでした。船井先輩も知らないみたいでした。安木先輩は良く分かりません。長野先輩は知っていて、首を縦に振りました。
「知ってる。超評判悪いヤリサーでしょ。あたしの学科にもメンバーいるけど、脳みそが金玉に詰まってそうな男で、クソチャラいの」
一応、もう一回言っておきますけど、長野先輩はとても可愛いらしい女性です。趣味はお菓子作りです。
「そう、それ。あのサークルさー」
小笠原先輩はへらへら笑っていました。そしてわたしたちに自分のしたいことを、いつも通り、ゆるーい感じで教えてくれま
した。
「潰そ」
「バイト先の女の子がさー、『DRAGON』のメンバーだったの。それでパーティーで薬盛られてやられちゃったんだって。あのサークルさー、パーティーのことレイブって呼ぶんだけど、『レイブじゃなくてレイプだろ』とか言われてるぐらいヤバいらしいね。警察なにやってんのって感じ。この間も夜中歩いてたら職質受けてさー、なんか近所でひったくりが出てるらしいんだけど、完全に俺のこと犯人扱いなの。俺、超ムカついてさー」
小笠原先輩はぺらぺらと詳細を話してくれました。ただし話した内容はほとんど自分が受けた職務質問のことでした。そして分かったことは、小笠原先輩の知人女性が『DORAGON』のパーティーで強姦被害にあったことだけでした。
わたしたちは再び、小笠原先輩を質問攻めにしようとしました。だけど小笠原先輩が「直接聞いた方が良くない?」といきなり電話を始めて、それは中断されました。
「あー、うん、俺。あのさー、こないだ話したサークル潰しの件なんだけど。え、超本気だよ。当たり前じゃん。余命半年なんだからやりたいことをやんないと。それで話戻すけど、仲間をゲットしたのね。で、仲間に説明して欲しいんだけど――」
小笠原先輩はしばらく話をした後、あっさりわたしたちに告げました。
「明日、会って話してくれるって」
頼んでいません。そして小笠原先輩は話を大きくするだけ大きくして、何事も無かったかのように自分が観たかったアニメ映画の配信を見始めました。映画はとても面白くて何だか悔しかったです。つまらなければ文句の一つも言えたのに。
その日はそのまま、船井先輩の部屋にみんな宿泊。そして翌日、わたしたちは小笠原先輩が待ち合わせ場所にした喫茶店に向かいました。
店に入る前、小笠原先輩は「船井君と安木君とマイは相席しないで近くで聞いて」と指示を出しました。わたしは首を傾げて尋ねます。
「わたしはいいんですか?」
「うん。いーよ」
どうしてですかと聞く前に、小笠原先輩は店に入ってしまいました。店にいた待ち合わせの女性――名前は吉永さんと聞いていたその人は、金に近い長めの茶髪にパーマをかけていて、ちょっと派手な感じの人でした。
「この子がそうなの?」
わたしを見た吉永さんが、小笠原先輩に問いかけました。小笠原先輩は「うん。あと三人いる」と答えて続けます。
「話してあげてよ。お願い」
吉永さんがポツポツと語りはじめました。新宿のクラブを貸し切ってパーティーをしたこと。お酒を飲んだらまともに歩けないぐらいにフラフラになったこと。そしてそのままホテルに連れて行かれて――そういうことになったこと。話しているうちに、だんだんと声が小さくなっていました。
「警察には行かなかったんですか?」
わたしの質問に、吉永さんはふるふると首を振りました。
「行ったら、無かったことに出来ない気がして」
警察に行かなくたって、あったことを無かったことになんて出来ません。でも、言いたいことは分かります。
「でさー、あいつら、次いつ集まるの?」
「次のレイブなら、二週間後にあるみたいだけど……」
「そっか。じゃあ、そこだなー」
二週間後。わたしは声を上げました。
「そんな早くは無理ですよ!」
「えー、だって余命考えたら、これ逃したら次のチャンスないかもじゃん」
お金が足りないぐらいの感じで、命が足りないと言う小笠原先輩。わたしは黙りました。そんなわたしに吉永さんが声をかけます。
「私は本当に忘れるからいいの。無理はしないで」
サークル潰しは吉永さんが頼んだわけではない。小笠原先輩が勝手にやろうとしているだけ。ということは――止まりません。
「小笠原先輩が、やりたいらしいので」
わたしは小笠原先輩をチラリと見やりました。吉永さんは諦めたように「そうね」と呟きました。この人、小笠原先輩を分かっているな。そう思いました。
それから少し話した後、吉永さんはその場を去りました。すぐテーブルに船井先輩たちが合流します。集まってから最初に発言したのは、長野先輩でした。
「どうしてあたしたちは相席しちゃダメだったの?」
小笠原先輩は、吉永さんが去って行った方を見ながら答えました。
「知らない人が目の前に沢山いると身体が震えるんだって。特に男は絶対にダメ」
場がシンと静まり返りました。その沈黙を小笠原先輩が破ります。
「とにかく話は聞いたでしょ。二週間後、決行だから」
「決行って、何すんだよ」
船井先輩が口を尖らせました。常識人な船井先輩らしい、とても普通で正当なツッコミです。そしてやっぱり、常識人ほど小笠原先輩には振り回されます。
「次の土曜まで一週間かけて、それぞれで作戦を考える。後で持ち寄って、その中から俺が選ぶ。それで行こう」
「お前は?」
「もう決めてあるよ。色んな意見聞きたいから、相談禁止でお願いね」
船井先輩がポカンと口を開けました。気持ちは分かります。一方的過ぎます。
「じゃあ、俺、用事あるから今日はこれで解散ね。パーティーチケットは手に入れとくから安心して。よろしくー」
小笠原先輩が店の出入口に向かいました。嘘でしょ。そう思ったけど、嘘じゃありませんでした。小笠原先輩は普通に出て行きました。信じられません。
「……大変なことになっちゃいましたね」
わたしの呟きに、長野先輩が答えました。
「うん……それにしてもあの女の人……巨乳だった」
全然見ていませんでした。ちなみに長野先輩の胸は本人曰く「ビリヤード用に設計されたコンパクト仕様」になっています。わたしも同じです。
「どうする?」
船井先輩が安木先輩をじっと見据えます。流されて、わたしと長野先輩も同じことをします。三人分、六つの視線を受けながら、安木先輩はおもむろに口を開きました。
「紙とペンを用意しよう」
AのためのBのためのC。わたしたちは続きを待って口を閉じます。
「あいつは僕たちそれぞれの僕たちらしい答えを求めている。それなら、最初にパッと思いついた答えが一番近い。とりあえずそれをメモしておこう」
なるほど。安木先輩はいつもとても深いことを考えています。話す順序がおかしいだけで。
長野先輩が鞄からメモ帳を取り出して、一枚ずつ千切って配りました。最初に思いついたこと。わたしはさらさらとペンを走らせ、そして紙を四つ折りにします。
「じゃあこの話は、一週間後まで無しね」
長野先輩の言葉に、全員が頷きました。それからわたしたちは、昨日、小笠原先輩と観たアニメ映画について語り合いました。本当に面白かったのです。悔しいけど。
その日は、それからすぐに家に帰りました。
わたしは実家から大学に通っています。公務員のお父さんと、専業主婦のお母さんと、二つ上のお兄ちゃんが住む二階建ての一軒家。何の変哲もない四人家族です。
帰ってすぐ、わたしは部屋のベッドに寝転がりました。そして喫茶店で書いたメモを開いて、はあと大きく溜息をつきます。どうしてわたしはこうなんだろう。自分で書いたくせにイヤになります。
『警察に通報する』
なんて優等生。そしてなんてつまらない。もはや作戦ですらありません。いの一番、最初に思いついたことがこれ。情けないです。
わたしは「ふつう」なのです。両親が揃ったふつうの家で育って、特別に頭がいいわけでも悪いわけでもないふつうの学校に行って、孤立することもグレることなくふつうに友達を作る、とてもふつうな女の子。そんなわたしは、ふつうじゃないものにとても強く惹かれます。
例えば、小笠原先輩。
ビリヤードは予測が大事な競技です。玉がこう当たればこう動く。そういう予測の精度と、予測を実現する精度の高い人が最後には勝ちます。
わたしという玉は、とても素直な動きしていると思います。張り合いがないぐらいに思ったように動いてくれる。だけど小笠原先輩は違います。跳ねたり、割れたり、やりたい放題。スタートは普通のビリヤードのゲームでも、すぐに小笠原先輩をどう扱うかのゲームになってしまう。ルールを支配するほどに自由なのです。
余命半年。
半年後に自分の命が無くなってしまう。考えるだけで恐ろしいです。わたしならまともにご飯を食べることすら出来ません。でも小笠原先輩はいつも通りちゃらんぽらん。小笠原先輩は、ちゃらんぽらんだけどふにゃふにゃではないのです。わたしは逆に、真面目だけどふにゃふにゃ。中身がない。なんとなく先生になるのもいいかもぐらいの気持ちで教育学部を選んで、いざ入学したら本気で先生になりたい同級生たちに気圧されておろおろする。そんな子です。
開いたメモ帳をじっと見ます。『警察に通報する』。小笠原先輩がこの意見を気に入ることはまずありません。でも、次の土曜まではあと一週間もあります。ここで小笠原先輩に選んでもらえる作戦を捻り出すことが出来れば、わたしはふにゃふにゃじゃなくなる。中身が出来る。そんな気がします。
「――よし」
わたしは部屋を出ました。温かいレモンティーを飲んで頭を働かせるために、リビングに入ります。そしてソファに座り、一人でテレビを見ているお父さんに、何となく話しかけました。
「ねえ、お父さん」
「ん?」
「わたしが余命半年って言ったら、どうする?」
お父さんは目をパチパチさせながら、不思議そうに呟きました。
「そういう映画でも見たのか?」
映画。そうだよね。そういう世界の話だよね。わたしは「ちょっとね」と誤魔化して、食器棚のカップを取りに向かいました。
一週間もある。甘かったです。一週間しかないが正解でした。
答え合わせの前日、金曜日になっても、わたしの頭の中の回答用紙には『警察に通報する』が書いてありました。他に思いつかないのです。というより思いついても『会場を爆破する』とかだから、これはダメだよねと却下してしまいます。なんとなく小笠原先輩は、そういう怪我人が出る方法は選んでくれない気がします。
金曜はサークルの活動日です。行きつけのビリヤード場でワイワイ球を撞く日。わたしは長野先輩と同じ台で撞いていました。小笠原先輩は「花台」と呼ばれる一番出入り口に近い台で、OBの一番上手な方と撞いていました。
小笠原先輩はとてもビリヤードが上手いです。カコンと気持ちのいい音を立てて、吸い込まれるように玉が穴に入っていきます。そしてわたしは下手くそです。ビリヤードは体軸がぶれないことが重要なのでふにゃふにゃだと弱いのです。こんなところにも、わたしと小笠原先輩の人間力の差が出ています。
ゲーム合間、長野先輩が「ちょっと休憩」と台の近くの長椅子に腰かけました。わたしは横に座り、我慢できずに問い尋ねます。
「マイさん、明日のやつ、決まりました?」
「うん、決まってるよ」
ですよね。明日ですもんね。わたしは軽く溜息を吐きました。
「決まってないの?」
「はい。というより、しっくりこなくて」
「何でもいいじゃん。小笠原、別に怒らないよ。つーか、あいつはあいつで考えてるみたいだから、よっぽどの意見が出ない限り自分の通すでしょ」
そのよっぽどの意見を出したいのです。小笠原先輩が「いいねー、それ、俺のよりいいわ。採用」と言ってくれる作戦を考えたい。
「小笠原先輩って、どういう作戦が好みなんでしょう」
「さあ。聞いてみたら?」
聞く。そうか、その手があったか。目から鱗です。
わたしはチラリと小笠原先輩を見やりました。OBの方と楽しそうに話していて、なかなか入り込める雰囲気ではありません。しかもあの人たちが小笠原先輩の余命のことを知っているかどうかも分かりません。小笠原先輩のことだから、さらっと話しているかもしれないけれど、そこに賭けるのは少し危険です。
後で話をする約束を取り付けよう。わたしはそう決めました。作戦のこと以外にも聞きたいことはいっぱいあります。ちょうどいい機会です。
わたしは花台まで行きました。そしてOBの方が撞いている傍ら、椅子に座って自分の手番を待っている小笠原先輩に話しかけます。
「小笠原先輩」
「なに?」
「今日の夜、空いてませんか? 二人きりでお話がしたいんですけど」
OBの方が、勢いよくこちらを向きました。
一年生の女子が三年生の男子を誘い出そうとしている状況に、わたしはその時になって初めて気づきました。そして気づいた瞬間、頭の中が真っ白になりました。なんとかしないと。焦って考えれば考えるほど、言葉は出てこなくなります。
小笠原先輩はいつも通りへらへら笑いながら、あっさり言い放ちました。
「えー、今日はオールするから無理ー」
わたしのサークルでオールとは、店にオールナイト料金を払って一晩中ビリヤードをする行為を指します。つまりわたしの誘惑は、ビリヤードに負けました。
ちょっと、イラッと来ました。
別に誘惑しようと思っていたわけではないけれど、結果的にそうなったのだから少しは動揺してもいいと思います。しかし見事に瞬殺です。せめて頭に「申し訳ないけど」ぐらいはつけて欲しい。腹が立ちます。
そんな自分勝手な反骨心が、わたしから次の言葉を引き出しました。
「じゃあ、わたしもオールします」
わたしはオールをしたことがありません。
理由は、ビリヤードが下手くそだからです。もう少し言うと、わたしと一緒に撞いて楽しい人がいないからです。オールをする熱意のある人はみんな上手なので、わたしと撞いてもまともなゲームになりません。
結果、初めてのオールに挑んだわたしは、延々と一人でセンターショットをする羽目になりました。センターショットとは、ビリヤード台の真ん中――センタースポットに的玉を置いて、少し離れた場所から手玉を撞いて的玉に当てて、コーナーポケットと呼ばれる隅の穴に入れる練習のことです。ビリヤードの最も基礎的な練習方法で、上手い人は九割ぐらい普通に成功させます。わたしの成功率は三割程度です。
的玉と手玉をセットします。手玉を撞きます。手玉が的玉に当たります。的玉が動きます。的玉がコーナーポケットに入る――ことはなく台の上を駆けまわります。わたしは、深い溜息をつきました。
「頑張ってるー?」
小笠原先輩。わたしは振り返り、暗い顔で答えます。
「全然ダメです」
「そうなの? ちょっと構えて振ってみて」
言われた通り、左手でキュー先を固定して、右手で柄を握って素振りをします。小笠原先輩はふむふむと頷くと、わたしの右肩と右肘に手を当てました。
「ここが動いてる。次は意識して、肘から先だけで振ってみて」
小笠原先輩が的玉と手玉をセットしました。そしてわたしは言われた通り、肘から先だけを動かすことを意識してキューを撞き出します。手玉が的玉にぶつかってカツンと硬質な音を立てて、的玉は綺麗にコーナーポケットに吸い込まれていきました。
「そうそう。そんな感じ。身体がブレたらダメだからね」
ブレたらダメ。痛いところを突かれました。
「やっぱり、ふにゃふにゃしてたらダメですか」
「そうだねー。どっしり構えて撞けば、片手でも入るから」
小笠原先輩が球をセットして、左手の支え無し、右手だけでキューを構えます。置き物みたいに動かない身体の中、右肘から先だけが振り子みたいに動きます。やがてスコンと軽快な音を立てて、的玉がポケットに吸い込まれます。すごい。
「そういえばさー、話ってなに?」
近くの椅子に座りながら、小笠原先輩が問い尋ねてきました。わたしの頭に用意していた質問が浮かびます。
――作戦、どんなやつがいいですか?
わたしは小笠原先輩の隣に座り、質問を投げました。
「小笠原先輩と吉永さんって、どういう関係なんですか?」
あれ、違う。なに聞いてるんだろ、わたし。
「バイトの同僚」
「それは分かりますけど、あんな話が出るなら特別な何かがあるのかなって」
「別にないよー。俺が入った時の教育係だったぐらい」
そうなんだ。良かった。――良かった?
「あのサークルはさー、話聞いたら潰したいって思うでしょ」
「それは、そうかもしれませんけど……」
「それにほら、俺、ちょっとぐらいイイことしないと天国に行けそうにないし」
小笠原先輩のネガティブな発言。とても珍しいです。わたしは目を丸くしました。
「どうしてですか?」
「ぶらぶら生きて来たからねー。オヤジもそんな適当な生き方をしてるからこんなことになるんだって怒鳴ってたし」
「そんな……酷いです」
「でも泣きながらだよ。泣きながら『馬鹿が! 馬鹿が!』ってずっと言ってた。それ見た時、やっちゃったなーって思ったんだよね」
小笠原先輩は眠そうな目でぼんやり中空を見上げていました。カコン。どこかの台で玉がポケットに入る音が、やけに大きく響きました。
「俺の癌さー、遺伝性みたいなんだ。母ちゃんも俺が小さい時、癌で死んでるの。おかげで弟がめっちゃビビっててさー。あ、弟は高校生なんだけど、俺と違って真面目なのね。応援部入っててさ。凄くない? 応援部だよ? 俺、高校の時、応援部に入るやつってどんだけ心がピュアなんだろうと思ってたんだけど、まさかの弟だからね。まあ、あいつ確かにスーパーピュアなんだけど。この前もー」
小笠原先輩はぺらぺらと弟さんのことを話し続けます。やがて話は、お父さんのこと、お母さんのこと、小笠原先輩自身のこと、あっちこっちフラフラして、どこにも到着しないまま終わります。そして分かったことは、小笠原先輩は自分の家族のことが大好きだということだけでした。
わたしは、相槌をうつだけでほとんど何も言えませんでした。きっと何を言ってもいいのに、何を言えばいいか分かりませんでした。ようやく口に出来たのは「素敵なご家族ですね」というありきたりな台詞。小笠原先輩はへらへら笑いながら「そうだねー」と答えて、そしてまた、眠そうな目でぼんやり中空を見上げます。
カツン。カコン。球がポケットに飛び込む音が響く中、小笠原先輩が呟きました。
「死にたくないなあ」
驚きました。
当たり前のことなのに、驚きました。そしてわたしは、自分が驚いていることにも驚きました。小笠原先輩は「人間、いつかは死ぬんだしさー」とへらへら笑いながら、小笠原先輩らしくいなくなってくれる。そんなことを期待していた自分に気がつきました。
何を考えていたのでしょう。
余命半年の人を、迫りくる死に怯える人を前にして、わたしは、わたしのことを考えていました。わたしを認めて欲しい。そんなことを考えていました。なんて自分勝手なのでしょう。これだからわたしはふにゃふにゃなのです。
小笠原先輩は笑いながら死んでくれる。
違います。
わたしが、笑わせなくてはいけないのです。
「――ごめんなさい」
気がついたら、謝っていました。小笠原先輩はいつも眠たそうな目を珍しく大きく見開いて、きょとんした顔をしていました。
「どしたの?」
上手く説明できませんでした。だから、一番頭に強く浮かんでいることを口にします。
「サークル潰し、頑張りましょうね」
話がびっくりするぐらいに繋がっていません。だけど小笠原先輩は、そんなのどーでもいいとばかりにゆるく笑いました。
「そーだね」
それから、わたしは一晩中センターショットを続けました。成功率は二割ぐらい上がりました。ふにゃふにゃの身体に、少しは中身が出来たのだと思います。
オールが終わって、一旦帰ってから、船井先輩の部屋に出向きました。
わたしが着いた時には、他のみんなは全員揃っていました。部屋に入るなり小笠原先輩に「発表、一番だから」と言われました。独断で決めたそうです。ひどい。
みんなでテーブルを囲みます。視線が自分に集中しているのが分かって、緊張します。わたしは声が裏返らないよう、ゆっくりと喋り出しました。
「わたしは――」
わたしが考えた作戦は――
「警察に通報するのが、一番だと思います」
わたしは、初心を変えないことにしました。
他が思いつかないということは、これが今のわたしなのです。わたしはこんなわたしがあんまり好きじゃないけど、それはそれ、これはこれ。認めなくてはいけません。
「普通で捻りがなくてつまらないと思います。でもこれが一番わたしらしいんです。だからわたしはこの答えで行きます。すいません」
わたしは頭を下げました。小笠原がゆるゆると笑います。
「うん。いいと思うよ」
褒めてくれた。ひとまず安心しました。そしてふと、暗い顔をしている船井先輩に気づきました。船井先輩はすぐ、その表情の理由を語ってくれました。
「……俺も同じ」
――そうでした。船井先輩は常識人なのでした。
「ごめんね、普通でひねりがなくてつまらなくて……」
落ち込む船井先輩。フォローする人は誰もいません。わたしはおろおろしながら長野先輩に視線を送りました。長野先輩はやれやれと口火を切ります。
「じゃあ、次は私ね」
胸の上に開いた手を乗せながら、長野先輩が話します。
「私は、会場に被害者の告白を流す作戦を提案します。このサークルにいるとどんな目に会うか、集まった女の子に教えてあげるの。それで悪い噂が広まってくれれば万々歳でしょ」
なるほど。わたしは頷きました。だけど立ち直った船井先輩が渋い顔をします。
「被害者の告白なんか集められるのか?」
「でっちあげでいいじゃない。私、ボカロ使えるから、それで作るよ」
「名誉棄損になるだろ」
「なるけど、近いことやってるんだから、向こうも公にしたくないでしょ」
船井先輩がグッと顎を引きました。長野先輩は続けます。
「まあ本当は、単純にパーティーめちゃくちゃにしたいだけなんだけどね。最初に思いついたのは、昔作ったふざけた曲を会場で流すってアイディアだったし」
「昔作ったふざけた曲?」
「そう。『雌豚音頭』って言うんだけど、聞く?」
念のため、もう一回だけ言っておきますけど、長野先輩はとても可愛らしい女性です。チョコレートのたっぷりかかったクレープをよく食べます。
「安木は、なに考えたの?」
長野先輩が安木先輩に話を振りました。安木先輩は短く簡潔に答えます。
「花火」
AのためのBのためのC。みんなが、続きを待って口を閉じます。
「警察に言っても動いてくれるかどうか分からないから、警察が向こうから踏み込んでくれるような状況にすればいいと思う。だからパーティー会場を荒らしたい。そのためには花火かなって。爆弾でもいいけど」
爆弾。わたしが過激すぎるから却下したアイディアを安木先輩が口にして、思わず呑みました。小笠原が首を横に振ります。
「爆弾はやめよ。怪我人が出るのは良くない」
予想通りの答え。安木先輩はあっさり「分かった」と引き下がります。わたしがダメだと思ったことをダメだと判断してくれて、なんとなく安心しました。
「で、小笠原はどうなの? どーせあんたのことだから、自分の考えを曲げる気はないんでしょ?」
「うん。まーねー」
小笠原先輩が、わたしたちの一週間は徒労だったとあっさり認めました。でもいいんです。無駄にはなっていません。少なくともわたしは、そう思います。
さて、いよいよ小笠原先輩のアイディアです。話の流れ的に、わたしたちはこれを実行することになります。みんなが固唾を呑んで見守る中、小笠原先輩がおもむろに口を開きました。
「俺のアイディアは――」
小笠原先輩が得意げに自分の考えた案を語ります。とりあえずわたしは、呆然としました。なにそれ。わたしのそんな気持ちを、船井先輩が代弁します。
「はあああああああああ!?」
船井先輩は声が大きいです。「うるせーぞ!」と隣の部屋の壁が叩かれました。よくここまで我慢してくれたと思います。隣の方、ありがとうございます。
一週間後、わたしたちは新宿に向かいました。
船井先輩がミニバンを借りて、それで移動しました。レンタカーは作戦を実行するクラブの近くで待機。逃亡用です。そして安木先輩と長野先輩が、わたしと小笠原先輩がペアになって、クラブに向かいます。全員大きな鞄を提げているので少し不自然です。なるべく人に見られないように、そそくさと歩きます。
入口に立つ茶色い髪を逆立てたサングラスの人にチケットを差し出して、まずは安木先輩と長野先輩が中に入ります。時間差で入ろうと決めているので、わたしたちはもう少し後です。そして何人かクラブに入った後、いよいよ小笠原先輩が行動開始を告げます。
「俺たちもいこーか」
来た。わたしは唾を呑み、このタイミングで言おうと思っていた言葉を口にしました。
「小笠原先輩」
「なに?」
「好きです」
「うん。俺も好きー」
――そうです。小笠原先輩はこういう人でした。わたしは笑いました。そして気恥ずかしさを隠すように、少し大股でクラブに向かいました。
中に入るとすぐに、色とりどりの光で照らされたステージとその奥のターンテーブルが見えました。ステージの周りにはボックスの座席が配置されています。そして既に人が大勢いて、音楽も流れていました。
わたしたちはまず暗がりに必要なものを設置して、事前準備を整えました。そして、ターンテーブルに向かいます。途中、長野先輩が安木先輩にしなだれかかる形で座っているのを見つけました。知らない男に声をかけられないための策。安木先輩は役得ですけど、ものすごく嫌そうな顔をしていました。
ターンテーブル近くまで来て、「じゃあ、よろしくねー」と小笠原先輩がわたしから離れました。わたしは「はい」と頷き、リモコン代わりのスマホを取り出します。ネットワークで電子機器が遠隔操作出来る時代。便利になったものです。
――音楽が途切れたら、スマホのスイッチを押す。
心の中でやるべき行動を復唱します。音楽が途切れたらスイッチを押す。音楽が途切れたらスイッチを押す。音楽が途切れたら――
途切れました。
小笠原先輩がターンテーブルの電源を抜いたのです。周囲がざわつきます。わたしはすぐ、スマホのスイッチを押しました。
『メスブタおーーーんど!』
セットしておいたスピーカーを通じて、合成音声が長野先輩の作詞作曲した「雌豚音頭」を歌い始めます。陽気で間の抜けた音楽と無駄に破壊力のある歌詞。クラブにはざわつきすら起きず、ただただ、みなさん呆けていました。
『メッスブタ♪ メッスブタ♪ ブヒッ♪ ブヒッ♪』
すいません、そろそろフォロー出来ません。本当に、本当に最後に一回だけ言っておきますと、長野先輩はとても可愛らしい女性です。猫の小物を集めています。
『ではこれより、イベントサークル「DRAGON」による強姦被害について、被害女性の証言を流させていただきたいと思います』
流れ続ける音楽を背景に、吉永さんから聞いた話を再構築して百倍ぐらい大げさにした告発が流れます。場にざわつきが戻ってきました。
その些細なざわつきを、突如噴き出た火花が喧騒に変えます。
安木先輩たちがドラゴン花火に火を点けたのです。地面にセットした筒から火花が溢れ出す、簡易打ち上げ花火のようなアレです。噴き出した花火に気を取られていると、また別の場所から火花が上がります。次々と連鎖する花火によって会場に煙が充満し始め、出入口に向かって人々が殺到します。
「おい、警察呼べ!」
「呼べるわけねーだろ! 幹部全員捕まんぞ!」
残念、もう呼んでいます。サークル幹部と思しき二人の男性の会話を聞きながら、わたしはニヤリと笑いました。そしてとうとう火災報知機が鳴って、室内に雨が降りはじめました。スプリンクラーです。
ぜんぶやろう。
小笠原先輩はそう言いました。そうです、ぜんぶやるのです。天国に沢山の思い出を持って行けるように。小笠原先輩が笑って死ねるように。
わたしたちが思いついたこと。
やりたいと思ったこと。
全て、やりきるのです。
人工の雨粒が髪の毛を濡らします。髪を濡らす水は頬を伝って、涙のように落ちて行きます。本物の涙がいくつか混ざっていることを、わたしは知っています。なぜだか動けなくなって立ち竦むわたしの手を、温かくて大きな手が包みます。
小笠原先輩でした。
小笠原先輩はわたしの手を引き、クラブの出入口に向かって走り出しました。そして満面の笑みを浮かべながら、朗らかに言い放ちます。
「上手くいったねえ!」
わたしは震えそうになる声を必死で抑えながら、出来る限り明るく答えます。
「そーですね!」
「楽しいねえ!」
「そーですね!」
「死にたくないねえ!」
どさくさに紛れて小笠原先輩が弱音を溢します。小笠原先輩がいつもへらへらしているのは、きっと周りに笑っていて貰いたいからなのです。ならばわたしも笑うしかありません。へらへら笑いながら答えます。
「そーですね!」
人ごみを抜けてクラブを出ました。走って、走って、船井先輩が待機している車に乗り込みます。安木先輩と長野先輩は既に一番後ろの座席に座っていました。わたしたちが乗った瞬間、船井先輩が車を発進させ、同時に小笠原先輩が叫びました。
「みんな、お疲れー!」
お疲れ様でしたー。全員がそう答えました。そして何がおかしいのかも分からないままに、しばらくケラケラと笑い続けました。