元々先輩の地毛は丸みのあるショートヘアだったはずだ。
しかしそれがさらに短くアップバングになっている。
聞けばこれから忙しくなるだろうということで、手入れが楽になるようなヘアスタイルにしたらしい。
ちょっとストリートっぽいジャケットとパンツという格好も相まって、今日の先輩はかわいいと言うよりかっこいいという感じだ。
彼の新しい一面を見て、また軽率に胸が高鳴る。
「礼の格好もかわいいな。似合ってるぞ」
「ありがとうございます!」
「ほんと見違えたよな。春先の礼と同一人物だとは思えないくらいだ」
期待していた“かわいい”をもらえて、私の簡単に浮かれてしまっていた。
朝から早起きしての準備は少し大変だったけれど、その苦労がすべて報われた気がする。
「礼は絶叫系は乗れるのか?」
「はいっ、大好きです! どんなものでも乗れます!」
「じゃあ今日はジェットコースターを制覇してやろうぜ」
「私、限定のチュロスも食べたいです」
それからすぐに電車に乗った私たちは、乗りたいものや食べたいものを話し合いながら目的地へと向かった。
天気がいいせいもあるが、休日のテーマパークは当たり前に人出が多い。
しかし和奏からもらったチケットのおかげで一般客より先に入場でき、人気のアトラクションにも早く乗れ、私たちは普通の高校生に戻って遊び回った。
「わっ」
「おい、大丈夫か」
昼ごろになると、園内の混み具合はピークになったようだった。
次のアトラクションへと向かうあいだ、思わず人の波に押し流されそうになった私の手を、先輩が慌てて引いてくれる。
「はぐれると悪いから、捕まっとけよ」
すると先輩がはにかみながらぎゅっと手に力を入れた。
思わぬ形で手を繋いでいることになり、あからさまに動揺して狼狽える。
先輩に深い意図はなく、ただ迷子にならないように気を遣ってくれたのだろうけれど、これはまるでデートをしているみたいだ。
少し前を歩く先輩に手を引かれて、体温も心拍数も急激に上昇していく。
きっと今の私の顔は、恥ずかしいくらいに赤くなっていることだろう。
「見て、あそこのカップル。女の子の方が背が高い」
「あーほんとだ。なんかおしゃれだね、あの子たち」
どうか先輩が真っ赤な私に気づきませんようにと願っていると、すれ違った女の人たちが新鮮そうに私たちを見たのが分かった。
そうか、カップルか。
私たちは周りからそんなふうに見えるんだ。
嬉しい、すごく嬉しい。
ねぇ、先輩。
私は願っていたとおり、あなたと並んで立てるような人間になれましたか。
「はぁ、なんかあっという間だったな」
「そうですね。でも楽しかったです」
「ああ、俺も楽しかった。誘ってくれてありがとな」
まるで夢のような時間は、先輩の言うとおりあっという間に終わってしまった。
ジェットコースターを全制覇して、豪華なパレードも見て、お目当てのチュロスも食べて、思い残すことは何もない。
日が暮れるまで遊んだ私たちは、名残惜しさを感じながらも、大人しく帰りの電車に乗り込んでいた。
長い座席に空いている箇所を見つけ、隣り合わせで座る。
するとさっきまで途切れることなく続いていた会話が止まり、なぜだか無言が続いてしまった。
しかしそれがさらに短くアップバングになっている。
聞けばこれから忙しくなるだろうということで、手入れが楽になるようなヘアスタイルにしたらしい。
ちょっとストリートっぽいジャケットとパンツという格好も相まって、今日の先輩はかわいいと言うよりかっこいいという感じだ。
彼の新しい一面を見て、また軽率に胸が高鳴る。
「礼の格好もかわいいな。似合ってるぞ」
「ありがとうございます!」
「ほんと見違えたよな。春先の礼と同一人物だとは思えないくらいだ」
期待していた“かわいい”をもらえて、私の簡単に浮かれてしまっていた。
朝から早起きしての準備は少し大変だったけれど、その苦労がすべて報われた気がする。
「礼は絶叫系は乗れるのか?」
「はいっ、大好きです! どんなものでも乗れます!」
「じゃあ今日はジェットコースターを制覇してやろうぜ」
「私、限定のチュロスも食べたいです」
それからすぐに電車に乗った私たちは、乗りたいものや食べたいものを話し合いながら目的地へと向かった。
天気がいいせいもあるが、休日のテーマパークは当たり前に人出が多い。
しかし和奏からもらったチケットのおかげで一般客より先に入場でき、人気のアトラクションにも早く乗れ、私たちは普通の高校生に戻って遊び回った。
「わっ」
「おい、大丈夫か」
昼ごろになると、園内の混み具合はピークになったようだった。
次のアトラクションへと向かうあいだ、思わず人の波に押し流されそうになった私の手を、先輩が慌てて引いてくれる。
「はぐれると悪いから、捕まっとけよ」
すると先輩がはにかみながらぎゅっと手に力を入れた。
思わぬ形で手を繋いでいることになり、あからさまに動揺して狼狽える。
先輩に深い意図はなく、ただ迷子にならないように気を遣ってくれたのだろうけれど、これはまるでデートをしているみたいだ。
少し前を歩く先輩に手を引かれて、体温も心拍数も急激に上昇していく。
きっと今の私の顔は、恥ずかしいくらいに赤くなっていることだろう。
「見て、あそこのカップル。女の子の方が背が高い」
「あーほんとだ。なんかおしゃれだね、あの子たち」
どうか先輩が真っ赤な私に気づきませんようにと願っていると、すれ違った女の人たちが新鮮そうに私たちを見たのが分かった。
そうか、カップルか。
私たちは周りからそんなふうに見えるんだ。
嬉しい、すごく嬉しい。
ねぇ、先輩。
私は願っていたとおり、あなたと並んで立てるような人間になれましたか。
「はぁ、なんかあっという間だったな」
「そうですね。でも楽しかったです」
「ああ、俺も楽しかった。誘ってくれてありがとな」
まるで夢のような時間は、先輩の言うとおりあっという間に終わってしまった。
ジェットコースターを全制覇して、豪華なパレードも見て、お目当てのチュロスも食べて、思い残すことは何もない。
日が暮れるまで遊んだ私たちは、名残惜しさを感じながらも、大人しく帰りの電車に乗り込んでいた。
長い座席に空いている箇所を見つけ、隣り合わせで座る。
するとさっきまで途切れることなく続いていた会話が止まり、なぜだか無言が続いてしまった。