翌朝、教室に着くと、和奏が一目散に私の前に現れた。
彼女はなぜか意味深に微笑んでいて、何かを隠すように後ろで手を組んでいる。
「もっと元気が出るようにいいものをあげるから、受け取ってほしいんだけど」
「いいもの?」
「これ。このあいだのコンクールの副賞なの」
和奏が隠した手に持っていたのは、有名なテーマパークのペアチケットだった。
しかもそれは特別に開園前から入れるというプレミアチケットで、滅多に手に入れることができないものだと聞いている。
「これであいつを誘って、二人で遊びに行ってきたら?」
「えっ、そんな……! こんないいものを私がもらっちゃうなんて悪いよ!」
「私は賑やかなところが苦手だし、礼に楽しんできてもらえたらそれで嬉しいから」
半ば強制的に握らされてチケットを受け取る。
2枚分のチケットは和奏の功績を称えたとても価値のあるものだ。
そんな大切なものを私にくれようとする彼女の心が一番嬉しい。
「ありがとう和奏。いつも私の心配させてごめんね」
「そんなのお互いさまじゃない」
和奏の厚意に甘えて、私はありがたくチケットをいただくことになった。
ちょうど今日の放課後は七海先輩と部室の片づけをする約束をしている。
先輩は賑やかなところが好きだろうし、誘えばきっと喜んでくれるだろう。
「お疲れ、礼。悪いな、片づけまで手伝ってもらうことになって」
「とんでもないです。私だってこの部室にはお世話になりましたから」
放課後、私と先輩はいつものように演劇部の部室に集まっていた。
今日は彼が留学するのに合わせて、大改造した部室も元の姿に戻すことにしていたのだ。
バックグラウンドやスタンドライトなどの撮影道具、二人で買いにいった衣装に、先輩が厳選したコスメたち。
それら大量の私物をすべて撤去し、感謝を込めて拭き掃除もする。
すると物のなくなった空間は、がらんと寂しげな広がりを見せた。
「おっし、こんなもんでいいだろ」
「だいぶ綺麗になりましたね」
「ああ。でもこうなるとやっぱり寂しいな。たった半年間だったけど、俺らは毎日ここで頑張ってたもんな」
先輩が眩しそうに目を細めるのを見て、切なさから胸が詰まる。
入学式の日、初めてこの場所でメイクをしてもらってからまだ半年しか経っていないだなんて信じられない。
それくらい私の人生も、私自身も大きく変えられたのだ。
最後に手元にある先輩のポートフォリオをめくり、私たちはその中の写真たちを二人で眺めた。
いつの間にかこんなにもたくさんの作品を作り上げたのだと気づいて、そんな自分たち自身に圧倒される。
本当に毎日が真剣で、楽しくて、かけがえのない青春だった。
そんな日々が終わってしまうのかと、感動からか寂しさからか、また涙腺が刺激されて涙が出そうになる。
けれどここで泣いてしまったら先輩に心配をかけてしまうだろうと、私は目にぎゅっと力を入れて込み上げてくるものを耐えた。
しんみりとした空気を変えようと、勢いよく先輩に向き直る。
「七海先輩」
「どうした?」
「これ、和奏からもらったんです。よかったら一緒に行きませんか」
彼女はなぜか意味深に微笑んでいて、何かを隠すように後ろで手を組んでいる。
「もっと元気が出るようにいいものをあげるから、受け取ってほしいんだけど」
「いいもの?」
「これ。このあいだのコンクールの副賞なの」
和奏が隠した手に持っていたのは、有名なテーマパークのペアチケットだった。
しかもそれは特別に開園前から入れるというプレミアチケットで、滅多に手に入れることができないものだと聞いている。
「これであいつを誘って、二人で遊びに行ってきたら?」
「えっ、そんな……! こんないいものを私がもらっちゃうなんて悪いよ!」
「私は賑やかなところが苦手だし、礼に楽しんできてもらえたらそれで嬉しいから」
半ば強制的に握らされてチケットを受け取る。
2枚分のチケットは和奏の功績を称えたとても価値のあるものだ。
そんな大切なものを私にくれようとする彼女の心が一番嬉しい。
「ありがとう和奏。いつも私の心配させてごめんね」
「そんなのお互いさまじゃない」
和奏の厚意に甘えて、私はありがたくチケットをいただくことになった。
ちょうど今日の放課後は七海先輩と部室の片づけをする約束をしている。
先輩は賑やかなところが好きだろうし、誘えばきっと喜んでくれるだろう。
「お疲れ、礼。悪いな、片づけまで手伝ってもらうことになって」
「とんでもないです。私だってこの部室にはお世話になりましたから」
放課後、私と先輩はいつものように演劇部の部室に集まっていた。
今日は彼が留学するのに合わせて、大改造した部室も元の姿に戻すことにしていたのだ。
バックグラウンドやスタンドライトなどの撮影道具、二人で買いにいった衣装に、先輩が厳選したコスメたち。
それら大量の私物をすべて撤去し、感謝を込めて拭き掃除もする。
すると物のなくなった空間は、がらんと寂しげな広がりを見せた。
「おっし、こんなもんでいいだろ」
「だいぶ綺麗になりましたね」
「ああ。でもこうなるとやっぱり寂しいな。たった半年間だったけど、俺らは毎日ここで頑張ってたもんな」
先輩が眩しそうに目を細めるのを見て、切なさから胸が詰まる。
入学式の日、初めてこの場所でメイクをしてもらってからまだ半年しか経っていないだなんて信じられない。
それくらい私の人生も、私自身も大きく変えられたのだ。
最後に手元にある先輩のポートフォリオをめくり、私たちはその中の写真たちを二人で眺めた。
いつの間にかこんなにもたくさんの作品を作り上げたのだと気づいて、そんな自分たち自身に圧倒される。
本当に毎日が真剣で、楽しくて、かけがえのない青春だった。
そんな日々が終わってしまうのかと、感動からか寂しさからか、また涙腺が刺激されて涙が出そうになる。
けれどここで泣いてしまったら先輩に心配をかけてしまうだろうと、私は目にぎゅっと力を入れて込み上げてくるものを耐えた。
しんみりとした空気を変えようと、勢いよく先輩に向き直る。
「七海先輩」
「どうした?」
「これ、和奏からもらったんです。よかったら一緒に行きませんか」