「あれ……アイメイク、少し変えましたか?」
「ああ、モデルが変わったからな。礼に似合うように、ターコイズのアイシャドウも使ってみた」
当初の構想では、葉山さんに合うパキッとした濃い青がメインのアイメイクを考えていた。
しかしモデルが私に変わったことで、アイシャドウも目尻に向かって淡いターコイズから深い青に変わるグラデーションになっている。
冴えた黒のアイラインとマスカラがより映えるようになり、まばたきを数回すると、その美しさに胸がときめいた。
これは急遽変更したとは思えないほど完璧な出来だ。
「先輩はさすがですね」
「当然だろ?」
これならすました顔をしていれば、凛とした高貴さも出せるような気がする。
一気に貴族令嬢になった気分になり、私はイスから立ち上がってその場でくるりと回ってから、ドレスの裾を摘んでみた。
「どうですか」
「もちろん、世界中の誰より美しいに決まってる」
先輩はそう言うと、私の右手を取り、手の甲にキスをくれた。
おまじないのようなその行為が照れくさくて、そしてとてつもなく嬉しい。
彼がそばにいてくれれば、私は無敵になれる気がする。
「よし、いっちょやってやろうぜ!」
「はいっ!」
それから二人で控え室を飛び出し、私たちは急いで撮影現場に向かった。
大階段では先に芹沢さん一人でのシーンが撮られ始めているようだ。
「なぁ、葉山美亜の代役に素人を抜擢したって本当か?」
「ああ。美人だけど大人しそうな子だったぞ。大丈夫かな」
すると前方にいたスタッフさんたちの声が聞こえ、私はつい足を止めてしまった。
体が固まった私を先輩が見上げる。
「礼」
「はい」
「よし、ちゃんと胸張ってるな。誰がなんと言おうと、俺は礼が葉山美亜に劣るだなんて思わない。全部食って奪ってやれ」
先輩に激励され、強く頷く。
以前の私だったら、ここで足を止めていたかもしれない。
でも、今の私なら大丈夫。
「礼は間に合わせのヒロインじゃない。礼こそがこの舞台に立つ運命だったんだって知らしめてやるんだ!」
「はい、行ってきます!」
先輩に背中を押され、私はついに舞台へと足を踏み入れた。
その瞬間スタッフの方々の視線が集まり、わっと声が上がる。
反応は上々なのは当たり前だ。
だって今の私は、とびきり素敵な魔法にかかっているのだから。
「佐倉さん、こちらです。時間がなくてリハーサルを終えたらすぐに本番なので、よろしくお願いします」
「はいっ」
促されるまま、大階段のてっぺんにある立ち位置に着く。
優雅な曲線を描くその階段を見下ろしながら、まさか自分がこんな場所に立つだなんて思ってもみなかったと、今さらながらに実感がわいてきた。
心臓が跳ねて落ち着かないのを、上から手で押さえて深呼吸をする。
「ああ、モデルが変わったからな。礼に似合うように、ターコイズのアイシャドウも使ってみた」
当初の構想では、葉山さんに合うパキッとした濃い青がメインのアイメイクを考えていた。
しかしモデルが私に変わったことで、アイシャドウも目尻に向かって淡いターコイズから深い青に変わるグラデーションになっている。
冴えた黒のアイラインとマスカラがより映えるようになり、まばたきを数回すると、その美しさに胸がときめいた。
これは急遽変更したとは思えないほど完璧な出来だ。
「先輩はさすがですね」
「当然だろ?」
これならすました顔をしていれば、凛とした高貴さも出せるような気がする。
一気に貴族令嬢になった気分になり、私はイスから立ち上がってその場でくるりと回ってから、ドレスの裾を摘んでみた。
「どうですか」
「もちろん、世界中の誰より美しいに決まってる」
先輩はそう言うと、私の右手を取り、手の甲にキスをくれた。
おまじないのようなその行為が照れくさくて、そしてとてつもなく嬉しい。
彼がそばにいてくれれば、私は無敵になれる気がする。
「よし、いっちょやってやろうぜ!」
「はいっ!」
それから二人で控え室を飛び出し、私たちは急いで撮影現場に向かった。
大階段では先に芹沢さん一人でのシーンが撮られ始めているようだ。
「なぁ、葉山美亜の代役に素人を抜擢したって本当か?」
「ああ。美人だけど大人しそうな子だったぞ。大丈夫かな」
すると前方にいたスタッフさんたちの声が聞こえ、私はつい足を止めてしまった。
体が固まった私を先輩が見上げる。
「礼」
「はい」
「よし、ちゃんと胸張ってるな。誰がなんと言おうと、俺は礼が葉山美亜に劣るだなんて思わない。全部食って奪ってやれ」
先輩に激励され、強く頷く。
以前の私だったら、ここで足を止めていたかもしれない。
でも、今の私なら大丈夫。
「礼は間に合わせのヒロインじゃない。礼こそがこの舞台に立つ運命だったんだって知らしめてやるんだ!」
「はい、行ってきます!」
先輩に背中を押され、私はついに舞台へと足を踏み入れた。
その瞬間スタッフの方々の視線が集まり、わっと声が上がる。
反応は上々なのは当たり前だ。
だって今の私は、とびきり素敵な魔法にかかっているのだから。
「佐倉さん、こちらです。時間がなくてリハーサルを終えたらすぐに本番なので、よろしくお願いします」
「はいっ」
促されるまま、大階段のてっぺんにある立ち位置に着く。
優雅な曲線を描くその階段を見下ろしながら、まさか自分がこんな場所に立つだなんて思ってもみなかったと、今さらながらに実感がわいてきた。
心臓が跳ねて落ち着かないのを、上から手で押さえて深呼吸をする。