「もしもし……?」

「礼ちゃん久しぶりね。元気にしてた?」

不審に思いながら出た電話は、ゴールデンウィークに出会った、あの女性編集者さんからのものだった。
そういえば私と先輩のスナップ写真が掲載される特別号が、そろそろ配布される予定だったはずだ。
それでわざわざ連絡をくださったのだろう。

「二人の写真、本当によく撮れてるのよ。巻頭に大きく載せてあるからチェックしてね」

「はい、ありがとうございます」

「それと今日は別の話もあってお電話したの。とっても大切な話よ」

「大切な話、ですか……?」

ふふっ、と電話越しに楽しそうな笑い声が聞こえて、私は慎重に耳を傾けた。

「実はウチの発行物って、一般配布が始まるより先に、関係各所に送られてるの。芸能事務所もその内のひとつなんだけど、今回の特別号を見た事務所からたくさん連絡があってね。あなたをスカウトしたいから紹介してくれって言うのよ」

「スカウト……?」

「ええ。ねぇ、礼ちゃん――」

耳元で繰り広げられる話に思考が追いつかない。
芸能事務所からスカウト。
ええっと、それって、つまり……。

「――あなた本気でモデルのお仕事をやってみるつもり、ない?」