「何がだ?」

「モデルをやることの、本当の楽しさです」

ううん、分かったと言うより、実感したと言う方が正しいのかもしれない。
先輩に魔法をかけてもらうのはとても楽しい。
けれど受け取るばかりじゃなく、先輩の思い描く世界を私も一緒に創り上げられたら、きっと今よりもずっといいものが出来上がるはずだ。

「今日、初めて自分で考えながら撮影をして、すごく楽しかった」

私は人形でも木偶の坊でもない。
一人の人間として、表現することができる。
それこそきっと、モデルをやることの楽しさなのだろう。

「私、頑張ります! そうしたら、もっと楽しくなるはずだから」

できることなら彼の魔法を、この手で高めてみたい。
まだ知識も経験もほとんどないけれど、きっとその分、伸びしろはたくさんあるはずだ。

「礼がそこまで本気で考えてくれて、俺もすげー嬉しい」

そこまで言うと、先輩は真っ直ぐな目で私を見つめて微笑んでくれた。

「やってやろうぜ。俺らなら絶対、世間をあっと言わせるくらい、すごいもんが作れる」

自信に満ち溢れた先輩は、やっぱりこの世のどんなものよりも輝いて見えて、その眩しさに思わず目を細めた。
うん、きっとできる。
七海先輩となら、どんなことだって。

「一緒に頑張ろうな」

「はいっ……!」

優しい言葉とともに差し出された手をゆっくりと取る。
この手があるから、怖がらずに進めるのだと思いながら。

高鳴る胸は、どんどんと熱を増していく。
逸るようなリズムに合わせて、私はまた新しい一歩を踏み出した。