交戦はだんだんとヒートアップしていき、お互いに笑顔とは言いづらい顔になっていく。
先輩のレアな変顔を目の当たりにしながら、私は体の中の余計な力が抜かれていくのを感じた。
まったく、高校生にもなって何をしているんだろう。
そう思うと、自然と笑いが込み上げてくる。
「そうそう、その顔」
「えっ?」
「言っただろ? 礼は笑ってるときが断然かわいいんだって」
なんてことのないようにそう言った先輩は、私の右腕を取って自分の左腕と絡ませた。
その言葉に目を丸くしながら、彼と出会った日のことを思い出す。
――涙は女の武器って言うけど、礼ちゃんは笑っているときの方が断然かわいい。
そうだ、笑顔だ。
先輩がかわいいと言ってくれた笑顔こそ、私の武器なのだ。
「では何枚か撮らせてもらいますねー」
緊張がほぐれ、大切なことを思い出したところで、ちょうどよくカメラマンさんの声がかかった。
少し離れた先にあるカメラのレンズを見つめて、深呼吸をする。
いい具合に冷静になった頭の中で、私は大量に購入した雑誌のことを思い出していた。
その中に写っていたモデルさんたちを思い浮かべながら、背筋を伸ばし、軽く顎を引く。
プロである彼女たちのようにはいかないけれど、見よう見まねでも、少しは魅力的に見えるだろうか。
先輩と組んだ腕にぎゅっと力を込める。
それから、私はいつものように笑った。
「わぁっ……!」
カシャっとシャッターの音がしたと同時に息を吐く。
すると撮影を見守ってくれていた先ほどの編集者さんが、驚きの混じった声を上げた。
こんな感じでよかったのだろうか。
反応を見るに、たぶん間違ってはいないのだろう。
けれど今日みたいな格好のときは、もっと元気な感じにした方がよかったかもしれない。
そう思い、先輩が隣で首を傾けるようなポーズに変えるのを見て、私も片足を後ろに蹴るようにポーズをとってみる。
少しだけ表情も柔らかくすれば、カメラマンさんの「いいね」の声の後に、またシャッター音が鳴った。
そのときだった。
表情が切り取られる瞬間、言葉にできないような快感が体を駆け抜けたのだ。
まるで電流が走ったかのように、手足がぴりぴりとしている気がする。
次はどうしよう。
もっと弾けた感じにしてみようか。
それとも少しクールにしてみようか。
途端にアイディアが溢れ出してきて、心が躍る。
なんだろう、とても心地いい。
とても、楽しい。
鼓動が高鳴って、たまらない――。
「発行、6月末だって。楽しみだな」
「……はい」
スナップ撮影が終わってからも、私の高揚感が薄れることはなかった。
ともすれば危うく見えるくらいに足取りが軽く、まるで夢を見ているみたいだ。
そう思って頬をつねれば、やはり軽い痛みが走って、これが夢ではないと分かる。
そんな私の一部始終を見ていたらしい先輩が、からかうように笑った。
「どうした? さっきの続きか? でも自分をつねってどうするんだよ」
「……七海先輩」
「ん?」
「私、やっと分かった気がします」
唐突にそう告げた私を見て、先輩は驚いたように目を見張った。
きっと、私の顔がものすごく真剣だったからだろう。
先輩のレアな変顔を目の当たりにしながら、私は体の中の余計な力が抜かれていくのを感じた。
まったく、高校生にもなって何をしているんだろう。
そう思うと、自然と笑いが込み上げてくる。
「そうそう、その顔」
「えっ?」
「言っただろ? 礼は笑ってるときが断然かわいいんだって」
なんてことのないようにそう言った先輩は、私の右腕を取って自分の左腕と絡ませた。
その言葉に目を丸くしながら、彼と出会った日のことを思い出す。
――涙は女の武器って言うけど、礼ちゃんは笑っているときの方が断然かわいい。
そうだ、笑顔だ。
先輩がかわいいと言ってくれた笑顔こそ、私の武器なのだ。
「では何枚か撮らせてもらいますねー」
緊張がほぐれ、大切なことを思い出したところで、ちょうどよくカメラマンさんの声がかかった。
少し離れた先にあるカメラのレンズを見つめて、深呼吸をする。
いい具合に冷静になった頭の中で、私は大量に購入した雑誌のことを思い出していた。
その中に写っていたモデルさんたちを思い浮かべながら、背筋を伸ばし、軽く顎を引く。
プロである彼女たちのようにはいかないけれど、見よう見まねでも、少しは魅力的に見えるだろうか。
先輩と組んだ腕にぎゅっと力を込める。
それから、私はいつものように笑った。
「わぁっ……!」
カシャっとシャッターの音がしたと同時に息を吐く。
すると撮影を見守ってくれていた先ほどの編集者さんが、驚きの混じった声を上げた。
こんな感じでよかったのだろうか。
反応を見るに、たぶん間違ってはいないのだろう。
けれど今日みたいな格好のときは、もっと元気な感じにした方がよかったかもしれない。
そう思い、先輩が隣で首を傾けるようなポーズに変えるのを見て、私も片足を後ろに蹴るようにポーズをとってみる。
少しだけ表情も柔らかくすれば、カメラマンさんの「いいね」の声の後に、またシャッター音が鳴った。
そのときだった。
表情が切り取られる瞬間、言葉にできないような快感が体を駆け抜けたのだ。
まるで電流が走ったかのように、手足がぴりぴりとしている気がする。
次はどうしよう。
もっと弾けた感じにしてみようか。
それとも少しクールにしてみようか。
途端にアイディアが溢れ出してきて、心が躍る。
なんだろう、とても心地いい。
とても、楽しい。
鼓動が高鳴って、たまらない――。
「発行、6月末だって。楽しみだな」
「……はい」
スナップ撮影が終わってからも、私の高揚感が薄れることはなかった。
ともすれば危うく見えるくらいに足取りが軽く、まるで夢を見ているみたいだ。
そう思って頬をつねれば、やはり軽い痛みが走って、これが夢ではないと分かる。
そんな私の一部始終を見ていたらしい先輩が、からかうように笑った。
「どうした? さっきの続きか? でも自分をつねってどうするんだよ」
「……七海先輩」
「ん?」
「私、やっと分かった気がします」
唐突にそう告げた私を見て、先輩は驚いたように目を見張った。
きっと、私の顔がものすごく真剣だったからだろう。