「ちょっ、せっ、待っ……!」

「あはは、テンパりすぎだって。せっかくだから今日の記念に撮ってもらおーぜ」

「そんな軽いノリで!」

「大丈夫だって。俺がいるだろ?」

私の慌てた抗議に、先輩は余裕の表情で返した。
軽く挑発するような目で見つめられ、体が硬直する。
やる前から怖気づいて諦めるなんてかっこ悪いと言われているようで、悔しさに胸が熱くなった。

たしかに私は臆病だ。
引っ込み思案で、まだまだ自分に自信なんてない。
けれどそんな私でも、先輩と一緒なら勇気をもらえる。
今日だって魔法をかけてもらったのだ。
シンデレラになれる、彼の特別な魔法を。

「……やります」

先輩と出会って、私は変わると決めた。
それなのに後ろ向きなまま足踏みなんてしていられない。
そう思い、自分を奮い立たせるように強く頷く。

「その意気だ」

すると先輩はいたずらっ子のようにウインクをして、私の背中を優しく叩いた。

「じゃあ、二人はそこに並んでくれる? ポーズは任せるわ」

「はいっ」

「っス」

撮影に参加することになった私たちは、承諾書にサインをし、それから近くにあった街灯の下に立つように指示をされた。
スタッフさんが準備をしているのを眺めながら、やっと撮影の現実味を感じてきた私の心臓は、面白いくらいにばくばくと動いている。
先輩はなんてことない様子で鼻歌をうたっているというのに。

「ここのスナップコーナーに載るのって、女子高生たちの憧れらしいぜ? きっとみんなが見るだろうなぁ」

「ププ、プレッシャーかけないでくださいよ……!」

「顔が強張ってるから、ついからかいたくなるんだよ」

にやにやと悪い笑みを浮かべる先輩に、心の中で拳を握る。
けれど彼が言うように、私の顔はこれ以上ないくらいに強張っていた。
このまま写真を撮られてしまっては、ブサイクな顔が誌面に載ってしまうことになるだろう。
できればそんなことは避けたいが、いくら落ち着くようにと自分に言い聞かせてみても、一度跳ね上がった鼓動はまったく治ってはくれない。

「そんなに固くならなくても、いつも俺とやってるようにやればいいんだよ。ほら、笑顔笑顔」

そんな私を見かねてか、先輩はお手本のようにニコッと笑いながら、私の口角を人差し指で持ち上げた。
そのせいで口元だけが不自然に上がり、顔が歪む。

「……にゃにするんですか」

「緊張してるときは無理にでも笑った方が落ち着くんだって。……ぶふっ」

「先輩が笑っちゃってるじゃないですか! もう!」

今の私の顔は、さぞかし面白いことになっているのだろう。
調子に乗ってさらに私のほっぺを持ち上げてくる先輩のほっぺを、私も負けじと摘み返してみると、彼は面白くなさそうに眉間にシワを寄せた。

「先輩の顔をつねるとはどういう了見だコラ」

「やられっぱなしではいられないので!」

「いい度胸だ!」