「ここのところ毎日毎日! 礼は病み上がりなんだから少しは負担も考えなさいよ、この詐欺師!」
「ああ!? 俺は詐欺師じゃねーよ! つーかお前、後輩だろ! 先輩には敬語使え、敬語!」
「あんたなんかに払う敬意なんて持ち合わせてないわよ!」
「言ったなクソガキ!」
「歳だってひとつしか変わらないでしょうが!」
白熱していく二人を眺めながら、美人の喧嘩は迫力があるなぁと、どこか他人事のように考える。
どうやら和奏も先輩も、かわいくて上品な見た目とは裏腹に、言いたいことははっきりと言う性分らしい。
どちらかと言うと引っ込み思案な私とは正反対だ。
「まぁでも、麻生の言うことも一理あるよな」
するといきなり言い争いを止めた先輩は、ふいに私の方へと向き直った。
「礼に無理はさせねーから。だいたい後輩の女子に荷物持ちなんてさせるわけないだろ?」
「でも私、力持ちですよ? 日常生活程度のことなら怪我も気になりませんし」
「ばか。そういう問題じゃねーよ」
私の頭にぽんと手を置いて、先輩は当然だろうと笑ってみせる。
しかし私は、その笑みにどうしようもなく戸惑ってしまっていた。
先輩はこうして、私をか弱い女の子のように扱うのだ。
以前より筋肉量は減ってしまったけれど、私は今でもそこら辺の男子には負けないくらい力があるし、それに見た目だけで言うなら、自分の方がずっと華奢なくせに。
「なら、どうして礼を連れて行くのよ。買い物くらい一人で行けばいいじゃない」
私が先輩に対して妙な照れを感じていると、和奏がなおも食い下がった。
たしかに荷物持ち以外で私が役立てることなんてあるだろうか。
すると先輩は待ってましたとばかりに手を叩き、私たちに説明をしてくれた。
「そろそろさ、新しいことにチャレンジしたいんだ」
「新しいこと?」
「ああ。今まではいくらメイクしたり髪をいじっても、着てるのはいつも制服だっただろ? 今度は衣装も揃えてみたいなと思ってさ」
言われてみればメイクや髪に拘っても、それらは制服姿には浮いて見えたかもしれない。
先輩もやるからには完成度を上げていきたいのだろう。
「衣装はサイズが肝心だからな。礼に試着してもらってから買いたいんだ」
「そういうことなら、もちろん一緒に行かせてもらいます」
「よっしゃ! じゃあ5月3日! 10時に駅の南口に集合でいいか?」
「はいっ!」
元気よく返事をすると、先輩は忘れんなよと言い残して、意気揚々と自分の教室へ戻っていった。
そんな彼とは対照的に、和奏は何か言いたげに私を見上げている。
「ねぇ、礼。嫌だったらきちんと言うのよ?」
「うん、分かってる。でも本当に、先輩といると楽しいの」
「それならいいけど、礼は押しに弱いところがあるから心配」
ムッとした表情のままの和奏を見て、私は悪いと思いつつも嬉しくなってしまった。
和奏の心配性は、私を大切にしてくれているからなのだ。
本当にいい親友に恵まれたものだと、心の中で幸せを噛みしめる。
「ああ!? 俺は詐欺師じゃねーよ! つーかお前、後輩だろ! 先輩には敬語使え、敬語!」
「あんたなんかに払う敬意なんて持ち合わせてないわよ!」
「言ったなクソガキ!」
「歳だってひとつしか変わらないでしょうが!」
白熱していく二人を眺めながら、美人の喧嘩は迫力があるなぁと、どこか他人事のように考える。
どうやら和奏も先輩も、かわいくて上品な見た目とは裏腹に、言いたいことははっきりと言う性分らしい。
どちらかと言うと引っ込み思案な私とは正反対だ。
「まぁでも、麻生の言うことも一理あるよな」
するといきなり言い争いを止めた先輩は、ふいに私の方へと向き直った。
「礼に無理はさせねーから。だいたい後輩の女子に荷物持ちなんてさせるわけないだろ?」
「でも私、力持ちですよ? 日常生活程度のことなら怪我も気になりませんし」
「ばか。そういう問題じゃねーよ」
私の頭にぽんと手を置いて、先輩は当然だろうと笑ってみせる。
しかし私は、その笑みにどうしようもなく戸惑ってしまっていた。
先輩はこうして、私をか弱い女の子のように扱うのだ。
以前より筋肉量は減ってしまったけれど、私は今でもそこら辺の男子には負けないくらい力があるし、それに見た目だけで言うなら、自分の方がずっと華奢なくせに。
「なら、どうして礼を連れて行くのよ。買い物くらい一人で行けばいいじゃない」
私が先輩に対して妙な照れを感じていると、和奏がなおも食い下がった。
たしかに荷物持ち以外で私が役立てることなんてあるだろうか。
すると先輩は待ってましたとばかりに手を叩き、私たちに説明をしてくれた。
「そろそろさ、新しいことにチャレンジしたいんだ」
「新しいこと?」
「ああ。今まではいくらメイクしたり髪をいじっても、着てるのはいつも制服だっただろ? 今度は衣装も揃えてみたいなと思ってさ」
言われてみればメイクや髪に拘っても、それらは制服姿には浮いて見えたかもしれない。
先輩もやるからには完成度を上げていきたいのだろう。
「衣装はサイズが肝心だからな。礼に試着してもらってから買いたいんだ」
「そういうことなら、もちろん一緒に行かせてもらいます」
「よっしゃ! じゃあ5月3日! 10時に駅の南口に集合でいいか?」
「はいっ!」
元気よく返事をすると、先輩は忘れんなよと言い残して、意気揚々と自分の教室へ戻っていった。
そんな彼とは対照的に、和奏は何か言いたげに私を見上げている。
「ねぇ、礼。嫌だったらきちんと言うのよ?」
「うん、分かってる。でも本当に、先輩といると楽しいの」
「それならいいけど、礼は押しに弱いところがあるから心配」
ムッとした表情のままの和奏を見て、私は悪いと思いつつも嬉しくなってしまった。
和奏の心配性は、私を大切にしてくれているからなのだ。
本当にいい親友に恵まれたものだと、心の中で幸せを噛みしめる。