「……お寺?」

流夜くんからのお誘いのデートで、何故か寺に連れて来られた。

しかもここって……。

今回ばかりは流夜くんの考えがわかってしまい、狼狽(うろた)えた。

「ん。どうぞ?」

手を差し出されて、刹那迷ってから渋々の顔を隠せずに取った。

「……ここ、知ってたの?」

「在義さんから聞いた」

「……そっか」

私の視線は俯いてしまう。

……ここが嫌なわけではないのだけど。大すきと連呼していても、まだ心に引っかかるものがあるのも否めない。

そこに在義父さんとではなくて流夜くんと一緒ってどうしよう。

「……嫌だったら、帰ろうな」

「………」

そう言われても、見上げる力はない。

ここを訪れた理由がわかっても、どうしてここへ来たのかがわからなくて。

「まあ、咲桜としては心配だよな」

「……? 心配?」

「大すきな桃子さんに反対されたら落ち込みそうだし」

「それは………」

言われて、ずーんと気が落ち込んでしまった。

流夜くんが言うことは的を射ている。

桃子母さんに反対されたら、在義父さんに反対されるより立ち直れないかもしれない。

「だから、今日は俺が頑張るから安心しな」

「………――――」

そっと、顔をあげた。

穏やかな眼差しが見てくる。

「安心して、一緒に行こう?」

「………」

唇は噛みしめるしかなくて、少しだけ肯いた。