「………」

俺が手放していくものは、元から俺のものではない。

だから、執着も後悔もなく背を向ける。

それだけだった。

それが冷酷とか言われる理由なんだろう。

でも、一度手の中に入れたものは、絶対に手放す気はない。

その数は、とても少ないだろうけど。

「さっき在義兄さんに、何言われてたんです?」

「え? いつも通りのご叱責ですが」

「……いつも怒られてんですか、貴方」

「いつもシメられてばかりですが?」

俺の返事に、朝間先生は平坦な瞳をした。呆れられたかな。

「戻りました~」

咲桜が戻って来て、また朝間先生といちゃつきだした。

……俺の立場は?