ずるずるずる。

「………」

トントントン。包丁の音が響く。

ずるずるずる。

「………」

カチ、ボッ。コンロに火がつく。

ずるず

「あの、覚える気あるんですか?」

背中に向けて睨むような声を飛ばした。

「まずは見て覚える、だろ」

「だからってこんな巻き付かれてたら動きにくい! 朝から頭に花咲いてますか!」

私の首に後ろから抱き付いて、背負うような恰好で学習中だった。ずるずるずる。