「お前勝手に巻き込むんじゃねえよ」

「ごめんねーりゅうの愛しの彼女だからこそ口が軽くなっちゃってねー」

「てめーは年中口に重石でもつけとけ。咲桜、訊くんなら俺に言え。こいつ頼ると遙音の回収とか雑用押し付けられるから」

「雑用⁉ 俺雑用でここへ連れて来られたの⁉」

回復していた先輩が、さっきとは違う蒼い顔で悲鳴をあげた。

「頼! お前も笑うな!」

次はこそっと口元を押さえる頼に怒鳴った。頼の肩が小刻みに震えている。

「あれ? 先生――流夜くん、眼鏡、……いいんですか?」

私たちが入ったときからお客さんのいない店内だったけど、笑満は反射で言い直した。笑満の憶測の心配は、流夜くんの今の姿が答えだった。

『教師神宮』では、ない格好。プライベートの神宮流夜の姿。

「ああ、まあな。昔、松生のご両親追い返したのが龍さんらしいから、たぶんほんとのこと言ってもいいかなと」

「………」

やっぱり龍生さんだったか……。

「あれ? 龍生さんは? なんか降渡さんが店主みたいになってますけど」

笑満が首を廻らした。ここの主は龍生さんなのに、姿が見当たらない。

「あ、買い出し行ってる。その間ここ、貸し切りにさせてもらったから」

「い、いいんですか⁉ お店の営業に支障出るんじゃ――」

笑満が不安そうに言うと、降渡さんは軽く手を振った。

「あ、大丈夫だいじょーぶ。遙音の問題解決のためにここ貸してって言ったら、「じゃあ仕入れでもしてくるわ」って自主的に出て行っちゃっただけだから。ココが必要な人は通すしねー。だから今は俺が偽店主」

「………偽店主、ですか」

「紛い物店主でもいーよ」

どっちも嫌な表現だな。ぼったくられたらどうしよう。