佳織が手配してあった、彼女の従兄弟の車に迎えに来てもらい、その車内で帰路に就いた一行。
「ごめんね……、今回のこと、結局二人に気を使わせちゃって……」
「いいんだって……。今回一番のとばっちりは茜音でしょう。予定もなかったところに突然出かけることになってさ。結局無駄足食わせちゃったよ……。悪かったねぇ……」
佳織は申しわけなさそうに話すけれど、茜音は特に気にしている様子はない。
そもそも、このくらいのことで落ち込んだり腹を立てるような彼女ではないし、このくらいで気持ちがぶれてしまうようでは、今の計画を実行することだって出来なかったはずだから。
「ううん。これで候補地一つ消化したし……。あとはどこかなぁ……」
「本当にどこなんだろうねぇ……。少し絞り方変えてみるかぁ……」
そうは言うものの、茜音の記憶だけが頼りとなれば、結果はあまり変わらないのかもしれない。
「まだ半年以上あるんだから大丈夫ぅ……。それにもし見つからなくても……、たぶん大丈夫だから……」
「あんたが大丈夫でも、あたしたちは悲しいぞ……?」
「そうね……。茜音にはちゃんと見付けてもらいたいよ……。どう考えたってうちらの中で一番苦労してるんだから……」
口では大丈夫と言ってはいるが、きっとその時のことはまだ考えないようにしているのだろう。
こんな茜音を一人にしていいわけがないと二人は思っていた。
「ねぇ茜音……」
「うん?」
「茜音は……、彼と再会したらどうするの……?」
「う~ん……。まだ何も考えてないかもぉ……。その前に会えるかどうかも分からないからなぁ……。もう少ししたら考えるかもぉ……」
「うそばっかぁ……。告白してそのままゴールインでしょぉ?」
以前から茜音は彼に気持ちを伝えることは公言していたし、彼女の想いの深さを考えればその先までだって十分に考えられる。
それは茜音が10年という年月を経て彼と再会するという前提の話なのだけれど……。
「うん……、でも……健ちゃんにも、いい人ができているかもしれないし……」
「んなバカな……」
「でも……、わたし一人で待っているだけって、不自然じゃないでしょ……?」
「そりゃぁそうだけど……」
彼女の言うとおり、当時は間違いなく両思いだった二人でも、これだけの長い間会うこともなければ気持ちが変わってしまうことの方が可能性としても不思議なことではない。
それに、もしそうであれば、茜音のサイトを見付けたとしても名乗り出られないことも理由がつく。
「ごめんねぇ……。最近そんな悪いことしか思い付かなくて……。夢にまで出てくるんだもん……」
「うーん……」
他の面々も、なんと返せばいいか答えが見つからない。
これだけの時間を純粋に彼のために費やし、約束を守るために高校生としてのレベルを超える行動をしている。
なによりも、これだけの気持ちのモチベーションを保って生活を送れている方が不思議なくらいなのだから。