週があけての月曜日、放課後に佳織は茜音と菜都実を引き連れて、校内のOA実習室に向かった。

 授業が終わると時間まで生徒たちに公開されていて、自由に使うことが出来る。

「週末どうしたのぉ? お店に来なかったからぁ」

「ん? あ、ごめんねぇ。それより、これを見たら一発で分かるって」

「ほえ?」

 佳織は自分で記録してきたと思われるCD-ROMを演習室のパソコンにセットすると、その画像を一覧表示した。

「ここはぁ? あ~!」

 茜音は思わず大きな声を出して口をふさいだ。

「どうだぁ~。あたしのデジカメだけどね。これで文句ないでしょ?」

「佳織……、あんたねぇ……」

 端末の画面に表示された画像はあの渡された写真とほぼ一致したものだ。ファイル日付を見ると、週末土曜日の日付になっている。

「あうぅ……。こんなことしてたのかぁ……。内緒で行くなんてずるぅい」

 全部で100枚近くある写真をざっと確認していく。

「まぁまぁ……。大見得切って行って大はずれだったら最悪じゃん? 従兄に車出してもらって、こき使ってきたのよ。萌ちゃんのお墨付きが無くても行くつもりだったんだけどね」

「最初から見当ついていたってこと?」

 菜都実も不思議そうに尋ねる。いくら佳織とて全国の沿線風景を、しかもこんな山の上からのアングルを見ているわけではないはずだ。

「実はさぁ、この写真、同じアングルはある意味有名なんだよ。あと、このプリントを見てみそ?」

「ふに? ほぇ~、ほとんど同じ~っていうかそのまんまじゃん……。どうしたのこれぇ?」

 佳織が差し出したもう1枚の紙にはいわゆるアニメの1シーンらしい画面が印刷されている。問題はそこに映っている場所の方で、問題の写真とほぼ場所が一致している。

 ここまで一致しているということは、この絵がこの場所からの風景をベースに描かれてているとしか考えられない。

「これさぁ、衛星放送でやってた番組の1シーンなんだよね。どっかで見覚えがあった訳よ。行ったら笑っちゃったっけ。もう景色もそのまんま。ここまでそのまんまだたとは思わなかったわぁ」

「へぇ~。本当にこんなところなんだぁ。すごくきれいな場所だねぇ」

 これまで高知県の山の中、飯田線沿線など言ってみれば秘境ゾーンを旅してきた茜音だが、それよりは場所も開けている。しかしこの景色は一度見てみたくなるような風景が記録されている。

「それだけじゃないぞぉ。この写真は先輩には伏せるか迷ってるんだけどさぁ……」

 駄目押しのように、佳織はあるファイルを開いた。テーブル席に座って、佳織の方に視線を向けてくれている。

「なんか優しそうな人だねぇ。お化粧とかもしてないけど、結構気さくな人だったでしょう?」

 茜音は写真や声などからでもその人の雰囲気をズバリ言い当てることもある。施設で育ち、幼い頃から多くの人たちの間でもまれて育ってきたことが影響していると本人は話していた。

「そうそう。そんで、この人が例の人なんだよ。まぁ、たまたまそんな話になっちゃったんだけさぁ」

「すげぇ強運……」

 佳織の話では昼食をとるために立ち寄ったレストランで、写真の話をしていたところ、オーナーさんが気がついて、本人に連絡を取ってくれたというのだ。

「あ、そいで、今も茜音が見抜いたとおり、ものすごく穏やかで優しいお姉さんって感じの人。こんな突然押し掛けたのに時間取ってくれてね」

「そうなんだぁ……」

「今回のことを話したら大笑いしてた。下級生を使うとはレベルが上がったって。連絡先も聞いてあるからいつでも出発できるよ」

「すごぉい……」

 いつもながら佳織の手際の良さには舌を巻くばかりだ。