「そうか、この二人用だったのか。それで数が合わなかったのね。らじゃ!」

 菜都実が調理場に入り、テーブルには佳織だけが残った。

「なにかあったんですか?」

「茜音の新作なんだ。この間出来たばっかりだけど、本当においしいから食べていってね」

 着替え終わった茜音がカウンターテーブルからお皿を持ってくる。

「はい。新作のシーフードグラタンですぅ。ホワイトソースを粉から作ったから味には自信あるよぉ」

「そうなんですかぁ。いただきます!」

 二人が喜々としてお皿に向かう。

「熱いから気をつけてねぇ」

「どうかなぁ……」

 少し不安そうに二人の顔を見ている茜音。

「これ……、本当に茜音さん一人で作ったんですかぁ?」

 フォークを置いた萌が尋ねる。

「うん……。オーブン料理は昔から作ってるから……。どうかなぁ……」

「美味しいです。新メニューで十分行けると思いますよぉ。でも、これ毎日作るわけにいかないですよね。学校もあるし……」

 美保の顔を見てもやはり反応は上々だった。

「そうなんだよぉ。だから不定期の臨時メニューかなぁって。作るのも1日かかるから……」

「隠しメニューだな……」

「あ、そうだそうだ」

 萌は何枚かの写真を茜音に渡した。

「はえ~、きれいだなぁ」

「この間の風景に似ているところを探してきました。写真の裏に場所が書いてあるんで、参考にしてください」

「ありがとぉ。そうそう、萌ちゃん良かったねぇ。写真もページも」

「はい。今度、ここでオフ会開いてもいいですかぁ?」

「もちろん! だって、あたしもそのメンバーだし」

 佳織が笑って入ってきた。

「日にちが決まったら任せて。店員権限で強制的に休みにするから」

 夕食用にと茜音が作ったおかずを渡して、美保と萌の二人は帰っていった。



 三人で今度の場所について話そうかと思ったとき、また表の扉が開いた。

「いらっしゃいませ~」

「おねーちゃん久しぶり~!」

 入ってきたのは、茜音達よりも小柄の女の子だった。

「ほえ?」

「由香利!! なんであんたがここにいるのよ!? 病院はいいの?」

「はぁ?」

 菜都実が信じられない物を見るように固まっている。

「菜都実……、この子知ってるの?」

 茜音と佳織はその菜都実を振り返って見ている。

「由香利……、私の妹よ……。双子の……」

 菜都実の突然の言葉。茜音も佳織も妹、しかも双子がいたなんてことをこれまで聞いたこともない。

「え~~~~~?? 双子ぉ~~~???」

「ほえぇ~~~???」

 突然のショッキングなカミングアウトに、佳織と茜音の叫びがお店の中に響き渡ったのだった。