いくら一卵性の姉妹と言えども、見た目とは違い性格までは似なかったようだ。
どちらかと言えば外向的な姉の美保と、対照的に内向派の妹の萌。服装も美保の方がラフなものを着ている。
その服装のことで、茜音がどうしても萌に聞きたいことがあった。
「ねぇ萌ちゃん。今日って私服だよね……?」
「はいそうですよ。この前のセーラーが学校の制服です」
そう尋ねたくなるのも仕方ない。今日の萌の服装は白いブラウスの上に夏らしい薄目のマリンブルーに白いラインチェック地の前開きベスト、スカートも同じ生地で襞の入ったもので、少しお洒落な私立の学校などの制服として見間違えられそうだ。
「そうだよねぇ……。でも、どこのブランドなんだろ……。この前から、こういうの売ってるところ探してみたんだけど全然ないんだよね……」
どうやら先日初めて会ったときから、茜音は萌の服装を見て、そのセンスの良さから手に入れたいと思っていたらしい。
すると萌ではなく美保が口を開いた。
「これは確か萌の手作りだよね」
「ほえーー?!」 「え? これ自作なの?」
茜音だけではなく他の二人にまで目を丸くされ、恥ずかしそうに萌は頷いた。
「はい、生地だけ買ってきて自分でミシンで縫ったものです。この前着ていたスカートもそうですよ」
「そうなんだぁ。じゃぁどこを探してもないよねぇ……」
萌は着ていたベストを脱いで茜音に見せてくれた。確かにどこにも製造元やブランド名を書いたタグがない。夏らしく薄手の生地だけど、縫製もしっかりしていてとても中学生が作ったとは思えない。ところどころに彼女らしい細工が施してあって、バックルなども可愛いデザインを使っていたり、背中側の腰のあたりにも飾りベルトの布をリボンのように結んで縫いつけてある。
「茜音こういうの好きなんだよねぇ……。そうかぁ、自作かぁ……」
「茜音も自分で作れるようになればいいんだよ!」
「うぅ、でもこんなの型紙がないと作れないもん……」
茜音も裁縫にはそこそこの腕を持っている。バイト先で使っているエプロンだけでなく、佳織や菜都実が持っている小物を入れておく袋などは茜音の手製だし、学校で制服のボタンが取れても、彼女に渡せばわずか数分の早業だ。
そんな彼女もここまでの洋服を作るのはまだやったことがない。
もっとも、茜音の言うとおりこれだけの洋服一式を作るとなると、その為の型紙だけでも大変なことになる。型紙だけならその手の本などにも載っていたりもするのだが、それを自分のサイズにするのが大変だから。
「これ、お姉ちゃんの制服が型の見本なんです……。だから制服みたいなデザインになっちゃったんですよ」
「なるぅ。そっか、その手があったか……」
もとが実際のサイズなら少しの手直しだけですむ。
「でも、なんでこんな凄いの作るようになれちゃったの?」
「デザインは好きなのがあっても、どうしても色とかが自分好みにできなくて……。あとあまりお金に余裕もないですから。だったら作っちゃえって……」
だから、型紙も自分で起こせるようになっているとのことで、茜音の採寸も約束してくれた。