「本当に、ありがとうございましたぁ」

「茜音ちゃんも、お疲れさま。残念だったけど……」

「いいんです。また頑張ります」

 夕方の空港。先日の約束通り、四万十川の源流を経由して、千夏兄妹と和樹は茜音を見送りに来ていた。

「香澄が行けないって悔しがってたぞ」

「うん、よろしくって」

 カウンターでチェックインし、身軽になると、四人は空港の展望デッキに上がった。

「今度は、茜音ちゃんところに遊びに行くね」

「うん。みんなで歓迎するよ。こっちに比べたらゴミゴミしているけれど、目の前は海だからね」

「千夏、そんなとこ行って平気なのか?おまえの人見知り…」

「誰も一人で行くなんて言わないもん」

「へいへい。俺はもう用済みだなぁ」

 千夏が和樹の腕にしがみついたのを見て、雅春は半分呆れている。

 でもそれでいいのだと。

「茜音ちゃん、私たち、これからも時間があるときは四国の中で探しておくから、それらしいところがあったらまた来てね」

 今回、茜音が直接見たのは、まだ四国の路線の中でもほんの一部だ。

 高知県内だけでも、東側半分が残っているし、四国の山岳地帯はまだまだ残っている。

 千夏達はそれを調べて写真で送ってくれることを茜音に約束していた。

「あ、そうそう。茜音ちゃん。たぶん、残りの二人には連絡が行ってると思うけど、あちこちで茜音ちゃん達の手伝いをしてくれるメンバーができたからさ。きっと足には困らないと思うよ」

 茜音のに賛同する雅春たちによる独自の連絡体制が完成したという。

 あまり迷惑をかけるつもりはないけれど、いざというときにはありがたい。

「ありがとうございます」

「茜音ちゃん……。そろそろ時間だよ……」

 出発時間までもうそれほど残っていない。千夏だけがセキュリティゲートまで行ってくれることになった。

「茜音ちゃん。本当にありがとう…」

 千夏は茜音に抱きついた。

「うん、千夏ちゃん、初めて会ったときより可愛くなったよ。和樹君のこと大切にね。わたしも頑張るから」

「うん。あ、そうそう! これ、昨日の写真。私からのお土産」

 昨日、二人だけで撮った写真。顔は違うのに、雰囲気は気心知れた姉妹と言っていいくらい似ている。空港のコンビニに置いてある複合機に画像を送ってプリントアウトしてくれた。

「ありがとう。大事にするからね」

「今度は私と和樹を迎えに来てね?」

 千夏は顔を崩したが、それでも何とか笑顔を見せた。

「もちろん。それじゃ、行くね……」

「茜音ちゃん! 頑張ろうね!」

 茜音はその声に答えるように、手を振ってゲートをくぐると、千夏の姿は見えなくなってしまった。

「千夏ちゃん、泣いてたなぁ……」

 最後の顔を思い出して、鼻の奥がつんとしてしまう。

「だめだめ。千夏ちゃんにあんなに慰めてもらったんだから」

 渡された写真を大切にしているアルバムにしまって、飛行機に乗り込んだ。



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「茜音大活躍だったんだってねぇ」

 数日ぶりのウィンディでの昼食。

 アルバイトをしながら、茜音は佳織と菜都実に高知での出来事と結果を伝えていた。

 結果の速報は現地からも届いていたし、なによりも千夏兄妹たちがその後も詳しい調査を続けてくれている。

「さぁて、このカップルが来る前に、もうひとっ走りしなくっちゃ」

「うん。どこか決まってるの?」

「あとは茜音がゴーサインを出すだけ」

 佳織が笑ってくれた。

「こんどはあたし達もついていくよ?」

「うん!」

 一つの旅の終わり。目的が果たされた旅ではなかったけれど、茜音は行ってよかったと思っていた。

 思い出の場所を探し出し、自分と思い出を共有している人と再会するためにまた走り出せばいい。茜音の1年は始まったばかりだ。