「そっかぁ。実際に行ってみるしかなさそうだよね」
夕食後、三人はそれぞれが調べた情報交換をしながら今後のことを話し合った。
「そうなんだよねぇ……。条件はある程度絞ってみたんだ。あとは使えるとしたらSNSで情報をかき集めるか」
インターネットは巨大な情報を持つだけに、それを1つ1つ探していくだけでも気が遠くなるような作業だ。条件を絞って探していかないと、なかなか目的の情報を探し出すのは難しくなってしまう。
「でもさぁ……、いざ確かめに行くとなるとねぇ……」
「やっぱ、これぇ?」
菜都実が指でジェスチャーをする。
「あぅ~。そうなんだよぉ……。先立つものがねぇ……」
茜音はテーブルに突っ伏した。
国内とは言え、場所次第では全国を巡ることになりかねない。交通費だけでなく遠出なら宿泊費も必要になってくるから、高校生のお小遣いだけでは限界がある。
普段の生活では、茜音があまりお金に苦しいと思うことはない。そもそもが浪費をするタイプではないし、彼女が世話になっている片岡家も比較的裕福ではあるが、今以上の迷惑をかけることはしたくない。
それと、櫻峰高校もやはり一般のアルバイトは禁止となっている。中には無視してやっている生徒もいるが、茜音にはそこまでの度胸はない。
「ねぇ、どうしても自分で旅費を貯めるってなら、うちでやったら?」
「ほえぇ?」
突然の菜都実の提案に一同驚く。何度か手伝いをしたことはあるが、それはあくまでお手伝いであり、報酬もケーキなどをもらって帰るくらいのものだ。
「だって、勝手は分かってるし、茜音も佳織も信頼できるし。よっぽどその辺のバイトの人を雇うよりいいと思うんだよね」
「でもぉ、アルバイト禁止だよぉ?」
茜音が言うと、菜都実は大笑いした。
「だって、あたしんちじゃん。あたしだって他のとこなら校則違反かも知れないけど、うちの手伝いしてることになるんだもん。お手伝い賃ってことでどう?」
「それもありかぁ……」
茜音が渋ろうとしたときには、佳織の方が先に納得してしまった。
「でしょでしょ?」
言うが早いか、菜都実は部屋を飛び出すと、今回の旅行の主催であり、ウィンディのマスターでもある父親を連れてきた。
茜音は最初どうしようか少し悩んだが、すぐに彼女の過去を話し、今回のアルバイトをやらせて欲しいいきさつまでを説明した。
菜都実の父親は、彼女の話を一通り聞き終わると大きくうなずいた。
「そうか。喜んで協力させてもらうよ。君たちなら店のことも良く知ってるから心配ないしね。正直、これからオンシーズンだから店も混んでくる。人手は必要だから」
「よっしゃ。これでお金のことは解決。あとは……」
「あとは何? 菜都実」
「ウィンディでバイトするなら、仕事の合間にも情報収集できる方がいいなぁ」
「そっかぁ。どうせ休憩時間もあるわけだから、パケ代を気にしないでいたいよね」
ただでさえ膨大な情報を扱うとなれば、通信費もできるだけ抑えておきたい。
「ん~。分かった。ちょっと考えるから待ってて」
佳織は菜都実に自宅兼店舗の見取り図を書いてもらって、いくつか質問をしている。
「分かった。お店の客席でネット出来るようにしておくよ」
話しを終えて佳織は自信たっぷりに答えた。