「ごめん……心配でつい……」

リンが横目で眉を下げたリョウを見ると、ふっと笑った。

「リョウは優しいね。さすが、私の幼なじみっ」

リンの笑った時に出る両頬のエクボを眺めながら、リョウは先程のリンの言葉からずっと気になっていたことを、思い切って言葉に吐き出した。

「ねぇ、ところでさ……リンの……初恋の人って誰なの?」

リョウは何処かに忘れてきてしまった初恋を探すなら、初恋の人を探した方が早いと思ったのだ。

──例えそれが自分ではなかったとしても。

「えー、恥ずかしいよ……」

そう答えながらも、リンは誰かを思い浮かべるように黒目を空に向ける。

「……えっ!嘘っ!」 

「リンどした?!」

リンがリョウの顔をじっと見つめた。その瞳にはあっという間に涙の膜が張っていく。

「リョウ……初恋どっかに忘れたから、初恋の人も思い出せない……ぼんやりは思い出せるけど顔が分からないの」

思わずリョウは、手のひらで口元を覆った。

心臓はバクバクしている。

リンの初恋を見つけてあげたい一心で尋ねたが、リンがリョウ以外の名前を口にするんじゃないかと気が気じゃなかったからだ。