咲桜に逢いたい…………。
「呪ってやる」
「いきなり何。正月から陰気だな」
吹雪は仕事も毒舌も年中無休なので、俺は元日から警察署に来ていた。吹雪の属する資料科で仕事中。
「バカが年明けの瞬間に写真送ってきやがった。クリスマスに咲桜が作ったケーキ食べたって……あれは呪っていいだろう。自慢してきやがってクソガキ」
「呪うの斎月(いつき)姫かよ。まあ、お前神祇(じんぎ)の生き残りだし、やろうと思えばやれるんじゃない?」
「やったら俺が小路(こうじ)と御門(みかど)に消される」
斎月(バカ)は、陰陽師二大大家の影小路(かげのこうじ)と月御門(つきみかど)の当主が、唯一主人と認める者の生まれ変わりの伴侶だ。
呪うのは陰陽師のあっちが専門職。
手にしていたファイルを閉じる。
「それに、神祇って言ったって本家筋じゃない俺はそれとは違う。最後の神宮は美流子(みるこ)だ」
「そんな御大層な家なのに衛が調べてくれるまで知らなかったとかお前らしいよね。……ん? じゃあ咲桜はどうなるの? 神宮本家の血、引いてるんだよね」
「そんな意味のないこと考えるくらいなら再会したときどう謝り倒すか考えた方がいいですよ、って國陽(くにはる)に言われた」
「主咲(つかさ)って本当に十六歳? ってか意味のないことなんだ」
「國陽は嘘言わないから、本当にそういう扱いなんだろう。司家がそう判断しているなら俺にどうこう出来る問題じゃない」
「まあお前がいいんなら、いいんだけどさ。あ。初詣とかは行かないの?」
「一応、今は美流子の喪中って気分でいるからやめとく」
「そう。お前がそう考えてるんなら反対はしないよ。それに呪うって言ったって、お前もそれなりにいいものもらってるんだろ?」
「………」