そこにあったのは医療機器ではなく、大きなカプセルだった。その中には液体が満たされており、その中に人間が入っているのが見えた。そしてその人間たちは皆、眠っているように見えた。
冴月は最初、父が自分を安心させるために見せた映像だと思い込んでいた。
「だってね、こんなに沢山の人がカプセルに入ってるなんて思わないもん!」
冴月は頬を膨らませ、不満をあらわにした。
真也はそれを見て思わず吹き出す。そして、つられて笑ってしまった。
「それに……、私以外の子たちも……」
そう呟くと、冴月は視線を下に落とした。その先にあるのは、小さな手だった。
「みんな、子供だった」
冴月は続ける。
「私たちは実験動物だったの」
冴月は拳を強く握る。
「あのね、お父さんはね……私たちの事をモルモットとか、実験材料って言うの……」
彼女はそう言うと、涙を流し始めた。
「……晶ちゃん?」
真也は驚いた。目の前で、女の子が泣いているのだ。それも、自分のために。
真也はオロオロとして言葉を探すが、何も言えなかった。真也にとって晶はクラスメイトで、いつも優しくしてくれている。それが涙をこぼしているのだ。
「ごめんね……なんでもないの……」
冴月はそう言うと立ち上がり、真也の隣に座ると頭を撫でた。その行動に真也は驚きを隠せなかったが、同時に安堵した。それは、普段の真也なら絶対にしないような行動だった。
「ありがとう。優しいのね、真也くんは」
「いや、そんな……」
「真也くんはいい子だよ……」
「え?……あっ……」
真也は自分の耳を疑いつつ、晶を見た。すると、彼女の腕に抱かれた赤ん坊が目に入ってきた。
「あ、それ……」
「うん、この子が弟なの」
「かわいい……」
「ふふっ、ありがと」
「その子はいつ生まれたの?」
「昨日よ」
「……え?」
「うん……。私が死んじゃうと思ってたから、産んでくれたの……」
冴月晶は泣き笑いの顔になりながら答えた。
「それで……どうして僕なんかに話しかけたの?」
冴月は目元を擦りながら、首を傾げた。そして、
「えっと……なんでかな……?」
と答えるとクスリと笑う。
真也も釣られるように笑ったが、すぐに真剣な顔に戻る。
その質問こそが、彼が聞きたかったことなのだから。
「ねぇ、晶ちゃん。教えて欲しいんだ。晶ちゃんたちがどうなったのかを」
冴月は黙って俯いた。そして、しばらく沈黙が続いた後、彼女は口を開く。
「分かったわ」
それから彼女は話し始めた。
冴月晶の弟が産まれたのは、彼女が事故に遭った翌日のことだったらしい。出産には危険が伴い、母子ともに危険な状態だったそうだ。そのため、医師の判断で帝王切開を行うことになった。
麻酔が効いている間に、彼女の両親は処置を行った。そして無事に、赤ちゃんが産まれた。しかしその直後、彼女は意識を失った。
医者はすぐに蘇生措置を行ったが、間に合わなかった。しかし不思議なことに、彼女は息を吹き返した。
その後、検査の結果から、彼女の体内に子宮が存在することが判明した。つまり、彼女は妊娠していたということだ。
彼女は目を覚ましたあと、両親から説明を受けた。自分は一度死んだのだと。そして、新しい命を授かったのだと。彼女は自分が死にかけていたことよりも、新しくできた家族が嬉しかったようだ。その気持ちを父親に伝えたが、彼は喜ぶどころか、とても困惑していたらしい。なぜなら、彼女の胎内にはすでに胎児が存在していたから。
冴月は最初、父が自分を安心させるために見せた映像だと思い込んでいた。
「だってね、こんなに沢山の人がカプセルに入ってるなんて思わないもん!」
冴月は頬を膨らませ、不満をあらわにした。
真也はそれを見て思わず吹き出す。そして、つられて笑ってしまった。
「それに……、私以外の子たちも……」
そう呟くと、冴月は視線を下に落とした。その先にあるのは、小さな手だった。
「みんな、子供だった」
冴月は続ける。
「私たちは実験動物だったの」
冴月は拳を強く握る。
「あのね、お父さんはね……私たちの事をモルモットとか、実験材料って言うの……」
彼女はそう言うと、涙を流し始めた。
「……晶ちゃん?」
真也は驚いた。目の前で、女の子が泣いているのだ。それも、自分のために。
真也はオロオロとして言葉を探すが、何も言えなかった。真也にとって晶はクラスメイトで、いつも優しくしてくれている。それが涙をこぼしているのだ。
「ごめんね……なんでもないの……」
冴月はそう言うと立ち上がり、真也の隣に座ると頭を撫でた。その行動に真也は驚きを隠せなかったが、同時に安堵した。それは、普段の真也なら絶対にしないような行動だった。
「ありがとう。優しいのね、真也くんは」
「いや、そんな……」
「真也くんはいい子だよ……」
「え?……あっ……」
真也は自分の耳を疑いつつ、晶を見た。すると、彼女の腕に抱かれた赤ん坊が目に入ってきた。
「あ、それ……」
「うん、この子が弟なの」
「かわいい……」
「ふふっ、ありがと」
「その子はいつ生まれたの?」
「昨日よ」
「……え?」
「うん……。私が死んじゃうと思ってたから、産んでくれたの……」
冴月晶は泣き笑いの顔になりながら答えた。
「それで……どうして僕なんかに話しかけたの?」
冴月は目元を擦りながら、首を傾げた。そして、
「えっと……なんでかな……?」
と答えるとクスリと笑う。
真也も釣られるように笑ったが、すぐに真剣な顔に戻る。
その質問こそが、彼が聞きたかったことなのだから。
「ねぇ、晶ちゃん。教えて欲しいんだ。晶ちゃんたちがどうなったのかを」
冴月は黙って俯いた。そして、しばらく沈黙が続いた後、彼女は口を開く。
「分かったわ」
それから彼女は話し始めた。
冴月晶の弟が産まれたのは、彼女が事故に遭った翌日のことだったらしい。出産には危険が伴い、母子ともに危険な状態だったそうだ。そのため、医師の判断で帝王切開を行うことになった。
麻酔が効いている間に、彼女の両親は処置を行った。そして無事に、赤ちゃんが産まれた。しかしその直後、彼女は意識を失った。
医者はすぐに蘇生措置を行ったが、間に合わなかった。しかし不思議なことに、彼女は息を吹き返した。
その後、検査の結果から、彼女の体内に子宮が存在することが判明した。つまり、彼女は妊娠していたということだ。
彼女は目を覚ましたあと、両親から説明を受けた。自分は一度死んだのだと。そして、新しい命を授かったのだと。彼女は自分が死にかけていたことよりも、新しくできた家族が嬉しかったようだ。その気持ちを父親に伝えたが、彼は喜ぶどころか、とても困惑していたらしい。なぜなら、彼女の胎内にはすでに胎児が存在していたから。